WITHコロナ期の不動産市況

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 世界が大きく揺れた2020年もあと1カ月あまりとなりました。
国内・海外とも再び感染者が増え、海外では再びロックダウンする地域も出ています。日本では連日最高感染者数を記録し、いつ再び緊急事態宣言が出されてもおかしくない状況になっています。
 その一方でワクチンの開発が進んでいることやアメリカ大統領選挙の決着が見えてきたことで、株価は日米とも近年まれにみる高水準を維持しています。11月17日の日経平均は一時26000円を超え、金融市場は回復どころかコロナショック前よりもいい状況にあります。また、GDPなどをみると実経済は概ね回復基調にあるという状況です。
11月の日本の状況は、「感染増と経済回復」。つまり日本においては「WITHコロナ」の流れに乗り始めているといえるでしょう。

緊急事態宣言後の経済データ

 11月に入り、緊急事態宣言が開けたあとのいわゆる「WITHコロナ」下での各種データが出始めました。
 7~9月期のGDP(速報値)は前期(4~6月期)に比べて+5.0%と大きな伸びを示しました。個人消費の大幅な改善が要因のようです。年換算だと+21.4%ですから大きく回復したといえるでしょう。家財などの消費財が大きく伸びた事やGOTOトラベルの効果があった言われています。
 一方、有効求人倍率(季節調整値)は1.03倍とかろうじて1倍は超えているものの、近年の中では低水準です。しかし、これはコロナウイルの影響が出始めた3月以前から、少しずつ低下しており、コロナウイルの影響だけではなさそうです。また、職種(あるいは企業に)によっては年収減が見られ、まもなく冬のボーナス期になりますが、多くの企業で例年よりも厳しくなりそうです。雇用環境の悪化や賃金の低下がこの先も続けば、少なからず分譲マンション等の実需不動産に影響を与えそうです。

WITHコロナ期の不動産関連データ

 首都圏における賃貸住宅賃料は、概ね横ばいからやや上昇という状況です。東京カンテイが毎月発表する分譲マンションの賃貸貸し物件の賃料の推移をみると、10月分は前月比プラス0.6%と3カ月連続でプラスとなっています。WITHコロナ期に入って以降はプラスになっているということになります。このデータでは近畿圏や中部圏でもプラスになっています。
 逆に苦戦しているのは、オフィス関連です。
 ビルディンググループデータによると、東京主要5区(千代田・港・中央・渋谷・新宿)の平均空室率は4.09%となっており、5カ月連続の空室率増になっています。主要5区全てで悪化しており、この傾向が6月以降続いているわけです。東京都心ほどではないにしろ、大阪や名古屋でも同様の結果となっています。オフィス賃料も、これに引きずられる形で安くなっています。

 企業のオフィス移転のサポートを手がける会社によると、このところ散らばっているオフィスの移転統合、一部床の返還、などの縮小コンサルティングがとても増えており、オフィスの空室率の上昇はこれからが本番で、年度を超えると(つまり4月以降)は、もっと空室率が上昇すると予想されています。WITHコロナ期に入って、緊急事態宣言中に比べて、朝夕の通勤電車の人は増えましたし、オフィス街に人は戻ってきました。しかし、リモートワークが定着し、新型コロナウイルが蔓延する以前のようにはもう戻らないと思われます。
 ホテル関連ではGOTOトラベルの恩恵で、現在は一時的に増えてきていますが、冬に向けて再び流行の兆しが見えてきており外出を躊躇する方が増えそうなことや、GOTOトラベルキャンペーンが終わると、再び苦戦を強いられることになるでしょう。