沖縄における住まいのあり方の変遷を考える

shisan_202010a.jpg

 沖縄県、特に南部エリアは、日本で有数の「マンションが多いエリア」です。人口増加渦中にある沖縄県において、都市部での住宅地有効活用のためには、当然と言えるでしょう。
 本土に目を向けると、1960年代・70年に都市への人口流入が顕著になり、それと同じくして「住宅不足」が叫ばれます。それに対応するために、マンション(分譲・賃貸)が増えます。
 

持ち家信仰はこうして高まった

 振り返ってみると、戦前から1950年代くらいまで、都市部では昔からの地主様など一部のお金持ち以外は借家(賃貸住宅)に住むのが一般的でした。これは、本土においても沖縄県においても同様です。
 3大都市(東京都区部、大阪市内、名古屋市内)だけでなく地方の都市部、那覇市内・・・・、基本的に、都市においては、文化住宅(アパート)、長屋、間借り、といった形態に違いはあれども、普通の暮らしをする多くの方々(=いわゆる庶民)は借家に住んでいました。
 一方、同じころ、地方都市(郊外)では、持ち家に大世帯で住むことが通常でした。
本土においては、農業・漁業・家内制手工業などが主たる産業でしたので、持ち家(=自宅)で商売を行う、自宅に隣する農地を交錯する等、職住近接の暮らしでした。沖縄県においては、持ち家にすみ、前近代的な暮らしをしている世帯も多かったようです。
 しかし、こうした「住まい方」は、本土において60年代70年代の高度経済成長期に大きく変化します。都市部で工業・商業が急拡大し、その担い手(労働者)として、地方都市からの多くの方々が都市部に移動します。おもに、農業・漁業・林業といった一次産業を営む家の後継ぎでない男性(次男・三男・・)の方々です。中学、あるいは高校を卒業して、大都市にやってきた方々が、10年くらい経つと家庭を持ちます。彼らの多くは、もともと「持ち家」で育っていますから、「いまは給与が少ないから借家だけど、いつかは自分の家を持ちたい」という「持ち家志向」というわけです。
 

 こうした方々が所帯を持ちます。そしてこうした世帯のニーズに応える形で、60年代後半~70年代にかけて、公的賃貸住宅つまり公団住宅、県営住宅、市営住宅が多く供給されます。「まず賃貸」という状況です。そして、それからしばらくすると、つまり70年代後半から80年にかけて、こうした方々が、「つぎは持ち家」と考え、都市の郊外において戸建て住宅供給が増えます。こうした流れのピークは、1980年代半ばから後半に起こる不動産バブルの時に起こります。つまりバブル期は、ベビーブーム世代(1947年~52年)が30代半ばから40代前半になる頃に起こったということになります。
 こうして振り返ると、「持ち家志向」が主流になったのは「地方」から、「都市部」への人口流入が大きな要因だったと言えます。
 しかし、こうした傾向が本土においては、1990年代後半から変わり始めます。1つの世帯において「賃貸住宅→持ち家」という住まいの変遷が圧倒的多数の志向だったものが、徐々に変わり始めます。
 

 現在3大都市に住む方は全人口の過半数を超えています。この傾向は2000年代に入って加速しています。つまり、「都市部で生まれ育った」方が圧倒的に多いわけです。そして多くの方が賃貸住宅に暮らしています。先に述べたような、地方都市の持ち家で生まれ育った方は、大きく減少しています。こうした事から考えても、この先も「持ち家志向」は減少すると思われます。
 

沖縄県における住まいの変遷

 沖縄県における住まいの変遷。キーワードは、「都市部への人口流入」と「世帯構成人数」です。
 沖縄県においては、復帰年が1972年で1975年前後から経済成長が顕著になります。北部から都市部、あるいは離島から都市部への移動が本格的に起こるのは、1970年代後半、80年代以降となります。こうした流れの中で、大世帯、大人数で住む という「効率的な暮らし」が中心の沖縄県において、徐々に世帯構成人数が少なくなっていきます。いうまでもありませんが、大人数での暮らしは、色々なものをシェアできるわけですから、「かなり効率的」と言えます。「都市部で、少人数世帯で効率的に暮らす」に相応しい住まい、それはまさしくマンションという事になります。こうして、沖縄県の都市部では、マンションに暮らす方が増えました。

沖縄における持ち家信仰

 それでは、沖縄において、「持ち家志向」は高いのでしょうか?
近年、沖縄県において「持ち家志向」は徐々に高まっているようです。しかし、本土において1980年代・90年代前半に起こったような、「熱狂的な持ち家志向」は、今のところ起こっていないように感じます。
 
 「どんな住まいに住みたいか」に影響を与える要因を想定してみると、

  • 収入 (概ね年収の3割程度を住居費にあてる)
  • 育ってきた環境
  • 住宅価格市況 (買い時・・)
  • 周囲の環境(ムード)
  • 等が主たる要因だと思われます。

     

     沖縄県における平均年収は上昇しています。次に、ムードと価格ですが、2013年くらいから2018年くらいは、いいムードで来ていましたが、さすがに価格高騰が激しく、買い時感がなくなっているような気配です。1)~4)から考えると、今後沖縄県において持ち家志向が大きくなるとは思えません。
    しかし価格が調整局面に入る気配もあります。この先は、多少買いやすさが見えてくれば、多少持ち家志向が上がるのかもしれません。