現在賃貸住宅に暮らす4割以上の方が、「次も賃貸住宅に暮らしたい」と考えているようです。かつて、「賃貸住宅は仮の住まい」そして、「そのうちに持ち家を」というライフスタイルが主流でしたが、こうした考え方が変わってきているのかもしれません。こうした傾向は、大都市圏だけでなく沖縄県においても広まっていくものと思われます。
住生活総合調査とは
5年に1度、国土交通省が主体となり調査される「住生活総合調査」の確定版が、8月上旬に公開されました。この調査は、総務省が行う住宅や世帯の実態を把握する住宅・土地統計調査と同じ時に行われ、このたび公表された最新の平成30 年調査(調査時点:平成30年12月1日)は13 回目になります。(注:平成 15 年までは「住宅需要実態調査」として実施。)
主な調査項目は、「住宅及び居住環境に対する評価」つまり、現在の住環境にかんする満足度、そして「今後の住まい方の意向」、「家族構成別に見た、住宅及び居住環境の評価と住み替え・改善意向」などになりますが、その中で、「借家」つまり「賃貸住宅」に関するデータから興味深いものを取り上げ、分析してみます。
賃貸住宅における満足度
本調査によると、借家に住む方の67%が現在の住宅に「満足・かなり満足」という結果でした。持ち家での満足度が81%でしたので、多少の差がありますがそれでも賃貸住宅において7割近くの方が、「満足・かなり満足」という結果は、「かなり、良い」と言っていいでしょう。
この調査において借家は、一般的な賃貸住宅=民営借家、と給与借家=社宅、そして公的な借家(UR・都道府県・市町村)に分かれます。
このうち、一般的な土地活用での賃貸住宅経営は「民営借家」に該当しますので、それにフォーカスして検討してみます。
本調査を過去分(2回)にさかのぼり、比較検討してみます。
最新の調査では、民営借家に住む方のうち84.4%の方が、「満足+やや満足」と回答しています。
民営借家の満足度は、概ね持ち家の満足度(戸建・共同住宅=マンション)と同じかやや上回る結果となっています。
過去をさかのぼると民営借家の満足度は右肩上がりで上昇してきました。この図でも平成20年調査から平成25年調査へは満足+やや満足で上昇しています。しかし、今回の調査では前回から0.7%ダウンしてしましました。1%を下回る数字ですから誤差とも言えなくはないですが、これまで一貫して満足度は上昇してきましたので、次回の調査に注目です。
次も賃貸住宅に住みたい
次に、「今後の住み替え希望」についての結果です。
借家に住んでいる世帯では、最も多い希望は、「次も借家」で43%となっており、これは「次は持ち家」の34.4%を上回ります。冒頭に書いたように、「ずっと賃貸がいい」という積極的賃貸住宅派が増えています。逆に現在持ち家の世帯では、「次も持ち家」という世帯が減っています。
上図をみると、現在借家に住んでいる世帯(下4本のグラフ)のうち、「次も借家」という方が毎回増えていることが分かります。そして、今回調査では、初めて「次も賃貸を希望」世帯が「次は持ち家希望」を、10ポイント近く差をつけて抜きました。
次も賃貸の理由は?
「次も賃貸」派が増えている理由としては、「大きなローンをかかえたくない」や「雇用・収入に不安」といった現実的な要因に加えて、1つ目の図表で見たように、「現在の賃貸住宅で十分満足」という声が増えてきていることがあげられると思います。
逆に、現在持ち家の方のうち、「次も持ち家」と考える方は、この15年で20ポイント近く減少しています。このように、持ち家志向の低下には歯止めがかかりそうにありません。「ずっと賃貸住宅」に住むというライフスタイル、この傾向は今後も続くものと思われます。
現在持ち家の方も、次は賃貸?
最後に、現在の所有形態別の、「次の住まいの希望」についてです。
先ほど述べたように、現在賃貸住宅に暮らす方の多くは、「次も賃貸」ですが、驚きは、現在持ち家の方の約4割が、「次は賃貸」と答えていることです。持ち家志向は、どこまで減るのでしょうか?