2020年最新 路線価の分析

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路線価とは何か?

相続税や贈与税の算定基準となる路線価の2020年分が、7月1日国税庁から発表されました。いくつか発表される地価の中で、不動産投資あるいは土地活用を考えている方には「重要な地価」と言えます。路線価には「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の2つあり、それぞれの税金算出のための評価額算定に用いられています。ちなみに、公示地価の概ね7~8割程度とされています。

路線価は、国有地以外の土地に適用されます。(つまり、国有地には税金がかかりません。)
また、宅地、田、畑、山林等を対象として定められており、公示地価と異なり路線価等の評価における宅地とは、住宅地、商業地、工業地等の用途にかかわらず、建物の敷地となる土地を指します。参考までに、公示地価では、住宅地・商業地・工業地に分かれています。

 公表される地価(おもに4つあります)の価格時点は、9月に発表される基準地価を除いてすべて1月1日時点となっています。基準地価は、1年の真ん中の7月1日が価格時点ですので、中間発表のような位置づけとも言えます。

路線価と新型コロナウイルス騒動

路線価の価格時点は、1月1日時点ですから、2月以降日本のみならず各国の経済に大きな影響を与えている新型コロナウイルスの影響を受ける前の数字ということになります。
 国税庁から発表される路線価は、いうまでもなく税を算定するためにその土地の評価額を明確にする目的で存在しているわけです。そのため、価格時点(1月1日)から、公表時(毎年7月1日)までの間に大きな災害等が起こると、評価額の修正が行われることになります。近年では、後述する2016年4月に起こった熊本地震の際にはその後修正となりました。今年2月ごろからの新型コロナウイルスの影響がどれくらい不動産価格に影響が少なからずでています。もし大きな影響があると算定されれば、熊本地震の時のような修正があるかもしれません。

 まずは、全国の路線価を見てみましょう。

2020年路線価の状況

今年も最も高額だったのは、東京都中央区銀座5丁目銀座中央通りで4592万円(1㎡あたり)となりました。ただし伸び率はそれほど大きくなく昨年からの上昇率は0.7%に留まりました。ちなみに一昨年→昨年はプラス2.9%でしたので、伸び率の鈍化が分かります。

 
2020年最新 路線価の分析|資産活用総研 大鏡建設
 

 図は各都道府県別の最高価格地点の路線価を上昇率順に並べたものです。最も上昇したのは、沖縄県那覇市の最高地点(国際通り)でプラス40.8%、昨年の上昇率が39.2%でしたので、この2年間だけで2倍の路線価になっています。
 2位は大阪梅田付近の御堂筋でプラス35%、昨年の上昇率は27.4%とこちらも大幅に上昇しています。以下、横浜、奈良、京都、神戸、札幌と続き、新型コロナウイルスの影響が出るまではインバウンド観光客がとても多く来ていた場所といえます。そのため、インバウンド観光客の大幅減少がどれほど不動産価格に影響があり、そして路線価に影響があるのか、気になります。

沖縄県路線価最高地点価格の推移

ここで、沖縄県における路線価最高価格地点である久茂地3丁目(国際通り)の価格推移を見てみましょう。

 
2020年最新 路線価の分析|資産活用総研 大鏡建設
 

2020年最新 路線価の分析|資産活用総研 大鏡建設
 

 2012年ごろから、じわじわと上昇基調にありましたが、ここ2年で一気に上昇したことが分かります。昨年分も上昇率1位でしたので、2年連続で1位という事になります。 ここで、沖縄県における路線価最高価格地点である久茂地3丁目(国際通り)の価格推移を見てみましょう。

 新型コロナウイルスの影響で、インバウンド観光客は3月以降の外国人観光客はゼロに近く、この傾向はあと1年くらいは続くと思われます。また、沖縄県を訪れる国内観光客は6月下旬ごろから徐々に戻ってきていますが、再び感染者が増えてきており(執筆時2020年7月14日)、この先は不透明です。

2016年熊本地震による評価調整

 こうした懸念を考えると路線価の修正が行われることが考えられます。
そこで、近年路線価の評価調査が行われた2016年の熊本地震の時の状況を見てみましょう。
熊本地震は2016年4月14日と16日に震度7の地震が2度連続して起こりました。その影響で熊本県と大分県(一部)に大きな被害が出ました。
 そのため、 こうした対象地域に該当する土地に対して、2015年6月14日から2016年4月13日までの間に相続等により取得した土地等と② 2016年1月1日から2016年4月13日までの間に贈与により取得した土地等 に対して、地価下落を反映した「調整率」をかけることになりました。
この時の国税庁のサイトをみると、「平成28年熊本地震の発生直後の価額」は、この「調整率」を2016年分の路線価等(路線価及び評価倍率をいいます。)に乗じて計算することができます、という記載があります。
 調整率の表も同サイトに細かく出ており、宅地は概ね95%の評価(つまり-5%)~100%となっていますが、被害が大きかったとされている益城町あたりでは75%評価の所もあります。
 このように、被害の状況により細かく再評価されていることがうかがえます。

2020年路線価の修正はあるのか?

国税庁によると、9月ごろに国土交通省から公表される基準地価(価格時点は7月1日)を考慮して、基準地価が広範囲で大幅に下落した場合、国税庁は地域ごとに一定の係数を路線価に乗じて減額する案を検討しているようです。
これまで、東日本大震災や熊本地震の時のように、災害が原因による調整が行われてきましたが、こうした新型コロナウイルスといういわば感染症による、路線価の見直しはこれまで、見られなかったと思いますので、9月以降の国税庁から発表に注目が集まります。