フラット35の制度変更は、賃貸住宅投資促進につながる?

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2020年4月から住宅金融支援機構の「フラット35」の制度が一部変更になります。毎年(例年4月と10月)、政策的に少しずつ制度変更が行われていますが、2020年4月からの制度変更は、賃貸住宅投資(土地活用としての賃貸住宅建築投資)、広くは不動産投資を行う方には、重要な制度変更ですので、ここで解説を交えてご紹介したいと思います。

フラット35について

 住宅金融支援機構はその名前の通り、「住宅(自宅)を購入する方を支援する金融機関」です。
個人向けの主力商品は、TVCMでもおなじみ「フラット35」、で35年間の長期固定金利が適用されるものです。また同機構が行う「賃貸住宅」への融資は、主に「省エネ賃貸住宅建設融資」と「サービス付き高齢者向け賃貸住宅建設融資」の2パターンで、一般的な賃貸住宅建築への融資は行われていません。
2020年3月現在の最頻金利は1.24%(融資額が9割以下の適用金利)となっています。(注:最頻金利は取り扱い金融機関で最も多い金利のことです。最低金利~最高金利の平均ということではありません)。長期固定金利としては、民間金融機関と比べてかなり低い水準の金利となっているため、長期固定金利利用される方(つまり、金利変動のリスクをとりたくない方)の多くが住宅金融支援機構の「フラット35」を利用されているようです。

また、フラット35は、融資を受ける本人またはその親族が住むための、新築住宅の建設費用(注文住宅)、または新築物件購入資金(建売住宅)、あるいは中古住宅(戸建・マンション)の購入資金等に使うことに限り融資が受けられます。つまり、「投資用物件を購入するための融資は受けられない」という事です。
しかし、これまで投資用物件(つまり自用でない物件)の購入で融資を受ける方も散見され、これが問題視されていました。自用として使っている(住んでいる)証拠として住民票の提出が求められますが、自らは住むことなく一時的に住民票だけを移して、1年程度経ってから住民票を戻すということを行うわけです。これでは、「国民の住宅購入を支援する金融機関」というそもそもの存在価値がなくなってしまいます。こうした背景もあり、この度制度変更が行われます。

総返済負担率の算定に含める借入金の対象が一部見直しに

 4月からいくつかの制度改定が行われますが、インパクトある見直しは、「総返済比率算定」の見直しです。
 「総返済負担率」とは、収入(年収)に対する年間合計返済額の割合の事で、フラット35においては、「総返済負担率は年収400万円未満30パーセント、年収400万円以上35パーセント」と定められています。例えば、年収600万円(収入合算なし)の方は、月の返済額は17万5000円までということです。先に述べた金利(固定1.24% 35年)だとすれば、総額約6000万円程度までとなります。
ここに、これまでは含まれなかった、「賃貸予定又は賃貸中の住宅に係る借入金の返済額」を年間合計返済額の対象に含めることになります。
 例えば、先に述べた方が、すでに2500万円のワンルームマンションを購入しており、そのローン返済額が7万円だったとすれば、月の返済額は10万5000円が上限となります。すると、借り入れ総額が一気に約3570万円(金利等は上記と同条件)まで下がってしまいます。こうなれば、購入する、あるいは建築する住宅は一変します。

いわゆる賃貸アパート(賃貸住宅)は加算の対象外

しかし、この「賃貸予定又は賃貸中の住宅に係る借入金の返済額を加算する」制度は、賃貸用のアパート向けのローン(ローンの対象が1棟の共同住宅)の場合は、年間合計返済額の対象には含めないことになっています。(注:ローンの対象が1棟の共同住宅であることについては、対象建物の登記事項証明書等の提出が必要)
土地活用として賃貸住宅を建築している方のほとんどの方は、アパートローン対象(つまり1棟の共同住宅)の物件で賃貸住宅経営を行っています。つまり、この加算の対象外という事になります。

ワンルームマンション投資から1棟賃貸住宅投資への移行が起こる??

 こうしてみると、例えば、2500万円のワンルームマンションを4つ購入(総額1億円)するのと、1棟で1億円の共同住宅(賃貸住宅)を建築するのとでは、どちらも融資を受けて購入したとすると、その後に自宅をローンで購入する時の融資状況が大きく変わることになります。これは、ワンルームマンション投資から、1棟賃貸住宅投資への移行が起こる可能性もあります。
 また、最近では20代・30代の独身時代に「将来の私的年金として」ということでワンルームマンションを複数買うも増えているようです。こうした流れにブレーキがかかる可能性があります。

ここまで、述べた制度改定は、2020年4月1日以後の借入申込み受付分から適用となります。「フラット35」の制度変更は、賃貸住宅投資に変化をもたらすかもしれません。