不動産の価格はどうやって、決まるのか?

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不動産の価格の特性

 不動産といっても、実際にはそこにある「モノ」ですから、他のモノやサービスと同じで需要と供給のバランス(一致点=交点)で価格が決まります。しかし、不動産には同じものが2つとありません。そして、同じく資産である株式などと違って、取引所のようなものがありません。売り手・買い手は、業者(ディベロッパーなど)の場合もあれば、個人の場合もありますが、いずれにせよ、両者のあいだでは1対1の相対取引が行なわれます。

 不動産には相場価格(かつては、業者のみが知りえた相場価格ですが、最近ではネットでも簡単に調べることができます)というものがありますが、実際の取引は相対のため、「どうしても欲しい」という方がいれば相場よりも高くなりますし、その逆に低くなることもあります。まずはこの特性を頭に入れておいてください。

3つの価格の決まり方

 不動産の基本は相対取引とはいえ、売買が成立するためには、まず売る側が、売りたい価格(公募価格、募集価格、売り出し価格などと呼びます)を提示しなければなりません。もちろん、人気のある中古マンションなどで、「〇〇〇〇万円くらいで買いたい」と仲介会社を通じて公募する場合もありますが、一般的には売る側がひとまず価格を決めて、それに対して買い手が「これくらいで買いたい」と希望価格(指値といいます)を伝えて、価格調整を行なって成立することになります。
 しかし、この売り出し価格を決めるに際して、ある程度の「買ってくれそうな」価格を算出しなければ、的外れの金額となって、高い場合は買い手がつかなくなります(逆に安すぎると損をすることになります)。
 では、この売り出し価格をどう決めればいいのでしょうか、不動産価格を求めるための代表的な方法は、不動産鑑定の理論に基づくと、①原価法、②取引事例法、③収益還元法の3つとされています。

 1つ目の原価法は、費用を積算する方法です。ここでは、不動産鑑定における原価法とは少し異なりますが、概要で説明します。この方法は新築物件などで多く用いられます。新築の場合、まず建物を建てるための土地を購入し、建物を建てるのに必要なコンクリート、鉄骨などの原材料を揃え、建設会社が建て、でき上がったものを販売するために広告を打ちます。その結果、土地代や原材料費、人件費、販売促進費といったものが原価になり、それにデベロッパー・販売会社が利益をのせます。さらに、これに市場性が加わってプラスマイナスされて、売り出し価格となります。

 たとえば100戸の部屋があって、土地代を含めた総工事費に加えて販売促進費などの合計(=原価)が10億円だったとしましょう。1戸あたりの原価は1000万円です。
 これに市場性を加味するわけですが、そのやり方を大雑把にいうと、たとえば不動産市況が好調であれば原価に利益幅を20%上乗せして1200万円で売り出す、逆に不動産市況が悪くて売れ残る恐れがある場合は、利益幅を15%に下げて1150万円で売り出す、といったものです。
 とはいえ、最終的な売り出し価格には当然、類似した物件の相場というものが反映されますから、そこから逆算して原価が適正な範囲に収まるように、土地の仕入れや建物の仕様、工事費をコントロールすることがデベロッパーには求められます。

中古物件は取引事例法が標準

不動産の価格はどうやって、決まるのか?|資産活用総研 大鏡建設

 これに対して中古物件の場合は2つ目の取引事例法が一般的で、文字どおり取引事例に基づいて価格を決めます。中古マンションならば、成約時期の近い取引事例を、同じマンション、あるいは近隣のマンションなどからピックアップして、時点・立地・広さ・階数などによる価格調整を行なうことで算出します。
 たとえばAさんが赤坂にマンションを持っていたとします。10階建てで、702号室に住んでいました。ある日、その下の階の602号室に住んでいたBさんが、その部屋を1000万円で売却しました。このような場合、Aさんの部屋を売却するのであれば、「6階が1000万円で売れたのだから、1階上がった分だけ値段を少し高めに設定して、1020万円で売却しましょう」ということになります。このように、成約事例に基づきおおむねの価格の検討をつけて、その後調整して売り出し価格を決めます。
 投資として賃料収入を期待して購入する場合などでは、利回りから逆算して価格を決める方法もあります。これが3つ目の収益還元法というものです。
 たとえば赤坂のワンルームマンションで賃料が月10万円の物件があるとします。ということは12か月(1年)で120万円の賃料になります。期待する利回りが4%だとすれば、120万円から逆算して計算すると、

120万円÷0・04=3000万円

となります。

投資物件は収益還元法が標準

通常、投資用物件の場合は、たいてい利回りをベースにして値決めをします。取引事例に基づいて価格を決めようとすると、同じようなケースを探さなければなりませんが、投資用の物件は実需用物件に比べて少ないため、実際の不動産取引の現場においてはむずかしくなります。
 たとえば、自分がいま働いているオフィスビルとほぼ同じ条件のビルを探してくださいといわれても、なかなか見つけることはできないと思います。同じビルの別のフロアが運良く取引されていれば別ですが、そうでなければ、駅からの距離や周辺環境が異なるうえに、フロアの広さや設備などもまったく異なるのが普通です。不動産物件というのは、まさに一つ一つが世の中に1つしかない商品なので、取引事例だけで値決めできるのはあまり多くないと思います。
 マンションの場合は、同じマンションの別の部屋の取引事例を探すことができるケースもありますが、マンションでも1棟丸ごとの取引になると、取引事例よりも利回りからの逆算で価格を決めるのが通例です。