オリンピック開催が不動産市況に与える影響~沖縄には影響があるのか?

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「オリンピック後に不動産価格は大暴落する」という記事は2017・18年頃に週刊誌などで、よく目にしました。
 
東京オリンピック後の不動産市況はどうなるのでしょうか? 業界関係者だけでなく、多くの国民に関心のあることだと思います。
確かに、1964年に開催された東京オリンピックの時には、インフラ整備工事だけでなくホテルをはじめとした大きな建物が東京中に建築されて好景気が続いていたのが、オリンピック後は、こうした工事が終わってこともあり、景気は大きく悪化しました。そんな経験を実感として持っている方々はすでにリタイアしていますから、「経験に基づいて・・・」ではなさそうです。

 オリンピックの開催地が決まるのは開催の概ね約7年前で、2020年7月から始まるオリンピックの開催地が東京に決まったのは2013年9月8日(日本時間)でした。その頃は、同年春からの金融緩和政策が影響し不動産市況がだんだん良くなっている頃でした。
 
 過去の例(他の都市でのこれまでの開催)もあわせて検討してみると、オリンピック開催が決まると開催地決定~開催までの間に、開催都市では確実に以下のようなことが起こっています。

1) 外国人観光客が増え、ホテルが増える

 開催地の決定は世界的なビックニュースであり、世界各地で「TOKYO」の名前が広まります。

 極東にある日本の首都である東京は、アジア各地からはそれほど遠くありませんが、欧米各国からは飛行機で10時間以上かかる、とても遠い国です。そのため、開催が決まるまで、首都東京でアジア各国を含めた外国人観光客を見かけることは、それほど多くありませんでした。2014年に訪日外国人は1000万人を超え、2018年に3000万人を突破、2020年には4000万人を超えようという勢いです。

 こうしたインバウンド需要を見越して、開催が決まって以降、大都市や観光地に大量のホテルが建設され、開業しました。

2) 開催都市のインフラ整備が一気に進む

 「不動産価格を押し上げる一番の要因は何か」、それはインフラの整備です。近くに新しい鉄道の駅ができる、アクセスに便利なバイパスが開通する、などは不動産価格上昇に直結します。

 オリンピック開催が決まると、開催都市ではスタジアムや選手村といったオリンピック関連施設だけでなく、選手や関係者、観戦客が大挙来るわけですから、それに合わせて道路や鉄道の整備が始まります。

 1964年に開催された東京オリンピックに合わせて、新幹線が開通し、首都高速が開通し・・・と東京の街は一変しました。これは、東京に限ったことではありません。他の地域での開催でも同様です。近年「お金のかからないオリンピック」を目指しているようで、今回の東京オリンピックでは、なるべく既存のものを活用して・・とされていましたが、しかし1964年までとはいいませんが、ある程度のインフラ整備(改修を含む)は行われています。また、こうした流れの中で、都心各エリアで再開発が一気に行われており、ここ7~8年の東京は大きく変貌しました。

 こうした背景の中で、2013年以降不動産市況は好転し、また住宅価格は上昇、東京から他の大都市へ波及、2017年ごろからは地方都市へも好調の波は波及しています。

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オリンピックが終わったあとは・・

 では、オリンピック開催後にはどうなるのでしょうか?

 東京オリンピックは7月24日~8月9日、パラリンピックは8月25日から9月6日までの開催予定です。
 1)現在の日本の経済状況 2)過去のオリンピック開催地での実例 の2つから検討しても、「大暴落する」ということは、まずないと思われます。

ホテル関連は厳しくなる?

 ホテル関連は少し厳しくなるかもしれません。オリンピック後には、それまでの反動で外国人観光客が減る可能性が大です。これは過去の他都市でのオリンピックの事例をみても言えます。そうすると、国内で急激に出張や観光がふえることはないでしょうからホテルは供給過剰になり稼働率が下がると思われます。そもそも、観光産業は様々な影響を受けやすく、例えば近年の例でいえば、政治的な問題から韓国からの観光客が減りましたし、、少しさかのぼれば、SARSの影響で大きな打撃を受けた例などが思い出されます。
 
 この観光関連不動産は、沖縄においてもネガティブな余波がある可能性があります。
昨今の沖縄本島は那覇中心街に大量のビジネスホテル(これは、国内ビジネス利用に加えてアジア各国の低単価客狙いと思われます)が建ちました。また、本島の中部以北の西海岸エリアにも、近年かなりの新しいリゾートホテルが建ちました。稼働率は、国内観光需要に加えて、インバウンド(特にアジア)需要に応えています。ここで、オリンピック後の一服感、アジアの情勢の変化等があれば、稼働率の急低下の可能性があります。

沖縄は、世界のリゾート地になるのか

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 これは、別の議論として、「沖縄は、恒久的なリゾート地になり得るのか?」という議論にもつながります。

 街が(あるいは島が)、つまりそのエリアが恒久的なリゾート地になれるか?別の言い方をすれば、ある旅行者が何度も何度も行きたくなる街(島)か?という事です。
 例えば、ハワイは旅行者の多くが複数回訪れています。「毎年ハワイに行く」「年に2回はハワイに行く」という方も多くいます。同じように日本人にとってのリピートする観光地としてはバリ島等があります。エリア観光産業の拡大を決める要素は、総客単価(除く飛行機などの移動費)・入域者数(数×泊数)・リピート率です。このような位置に沖縄がなりうるのか?ということです。

 本島の入域者(特に日本人観光客)はホテル内でお金を使う傾向にあります。最終日前日に南部エリアにやってきて、お土産を買って夕食を食べて・・ということを除けばホテル内で全て簡潔という方も多いようです。では、そのホテルにリピートするか?といえば、なかなか難しいと思います。ハワイ・バリ島になり得るか?について、私の見解は、現在の本島観光エリアでは難しい。宮古・八重山他の離島は可能性があると思いますが、ホテル以外の食事が充実していることが必須となると思います。

住宅価格はどうなる?

 住宅価格はどうなるでしょう。ロンドンではオリンピック開催が決まったのちにじわじわと住宅価格は上昇、そして五輪後(2012年)も4年程度、価格上昇を続けました。開催決定時からオリンピック後4年で2倍くらいになったと言われています。シドニー(2002年)や北京(2008年)でも同様です。

 では、日本は?が最も関心のあることですが、東京は五輪開催決定(2013年)からの6年で住宅価格は約1.3倍になりました。オリンピック後は、「ロンドンのように勢いが止まらず上昇を続ける」、ということはなさそうですが、現在の経済状況や住宅需要を鑑みれば、東京の住宅価格は、2020年以降も大きな暴落はなく、しばらくは横ばいの様相だと思います。