消費税増税は、どれくらい住宅着工数の駆け込み需要をもたらすのか

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10月15日、安倍首相は予定通り2019年10月から消費税を現行の8%から10%に引き上げることを表明しました。

消費税10%への道

思い起こせば、2013年10月に「2014年4月から、5%を8%に引き上げること」、併せて「その1年半後の2015年10月にさらに2%引き上げて、8%から10%とすること」が表明されました。 そして、2014年4月に予定通り消費税が8%に引き上げられました。
しかし、2014年11月、2015年10月に実施されるはずだった10%への増税は、経済市況等を鑑みて2017年4月に延期を決定、そして2016年10月、さらに「2019年10月に延期する」と再延期を決定しました。
そして今回、再々延期はせず「予定通り2019年10月から10%にする」と宣言したのです。

消費税増税批判の緩和策

税府は、増税することで財政の立て直しや福祉の充実、公共投資の拡大などのプラスの面を強調していますが、増税に対してマイナスの面も指摘されています。そのため今回も前回と同じく、消費税の引き上げによる消費の落ち込みを軽減させるための措置として、軽減税率の適用と減税処置を導入することが決まっています。
日常的に支出する食料品などの各種軽減税率を適用すること。そして自動車、及び住宅取得に係る減税措置の導入などを盛り込む方針になっているようです。

メディアは政府に批判的な論調が多いためか、消費税増税により景気の腰折れ懸念を強くアピールしています。しかし、日本政府が抱える最大の懸案事項は財政の立て直しであることも事実であり、増税は仕方ないと思う方も多いようです。

増税と住宅建築に関する経過処置

今回の増税においても、これまでの増税時と同じように住宅建築に関する経過処置がとられます。
基本的には、引き渡しが2019年9月30日までに終わっていれば、消費税は現行の8%となりますが、引き渡しが2019年10月1日以降になると消費税が10%です。

しかし、住宅建築は早くても4か月、一般的には半年くらいかかります。そうしたことを考慮し、増税実施日の6カ月前の前日までに請負契約が完了した住宅については、引き渡しが増税施行後であっても、増税前の税率つまり8%が適用されます。これを「経過措置」といいます。つまり、契約が2019年3月31日までに完了していれば、引き渡し時期に関わらず消費税は8%となるということです。

過去の消費税増税による駆け込み需要はあったのか

過去の経緯をみると、持ち家(戸建住宅)と貸家(賃貸住宅)の請負契約は1年半くらい前から増加し、経過処置の期限である半年前くらいがピークになり、その後減少しています。

消費税導入・引上げ前後の着工戸数(総計)の増減比率|資産活用総研 大鏡建設

上記図は、過去3回の消費税増税(0→3%、3%→5%、5%→8%)時の前後における住宅着工数の増減を示したものです。半年前に契約したとしても、請負契約を交わした後に確認申請という流れとなりますので、少し後ろズレしますが、半年前あたりにピークを迎えているのが分かります。過去3回は4月から増税で、そのうち3→5、5→8の時には、その約半年前(7月~10月)あたりに増加し、そして増税後は大きくマイナスとなっています。
こうして見ると、住宅請負においては、過去の消費税増税において、かなりの駆け込み需要があったことがわかります。2019年10月の増税においても、駆け込み需要は少なからず起こりそうです。

10%への増税で駆け込み需要は起こるのか?

2019年10月からの消費税増税では、住宅着工における駆け込み需要は多少起こると予想しますが、これまでに比べて小さな規模になると思われます。
その理由としては、第一に増税幅が2%とこれまでに比べて小さいこと。第二に駆け込み需要後の減少に備えた政府による対応策が講じられており、それが周知されていること。2013年頃から続く旺盛な不動産購入需要により、潜在的な需要が減少傾向にあること。等があげられます。
貸家(賃貸住宅)においては、近年税務対策で建築する方が多く、その時期がしばらく続きましたので、その将来需要を先食いしている感があります。そのため、駆け込み需要、そしてその後の落ち込みともに少ないと予想します。