8月31日に発表された2017年7月の住宅着工戸数(貸家分類)の数字は前年同月比マイナス3.7%でした。
2012年以降続いてきた賃貸住宅建設の伸びにブレーキがかかってきたようです。
図1
図1は2016年以降のデータですが、貸家(賃貸住宅)の前年同月比はずっとプラスが続いていましたが、ここに来て6月、7月(7月が最新です)ともマイナスという状況です。
図2
図2は2012年以降の住宅着工数の推移を示しています。
貸家の着工数は2013年に大きく数を増やしますが、これは2014年4月から導入された消費税8%の前の駆け込み需要があったためです。2012年対比でプラス11.8%となっています。この5%から8%への増税の際にはその後10%になる事含みでの増税でしたので、駆け込み契約がかなり多かったようです。
翌年2014年の住宅着工戸数は、その反動で大きく落ち込みますが、貸家カテゴリーでは落ち込みはなく、プラス1.7%となって、ハウスメーカーの数字を支えた格好になりました。
また、翌2015年からは相続税改正となって、相続税を払う基準が下がりましたので、その節税策として、所有する土地に賃貸住宅を建てる事例が増えました。こうしたこともあり、2014年、2015年はプラスになります。
しかし、2015年秋頃から賃貸住宅建築にブレーキがかかり始めます。そこに輪をかけて横浜にあるマンションでの杭の問題が発覚し、不動産市況が冷え込む気配が広がり始めました。
そんな状況が影響したのか、2016年1月末、日銀はマイナス金利政策を打ち出します(実際は2月半ばから施行)。それと同じくして日銀は国債を大量し、長期国債(10年物)の金利が2月にマイナスになります。これらは、不動産融資等貸出金利の低下をみたらしました。その結果、不動産市況が再び盛り上がり、また賃貸住宅の建築増につながりました。
こうしたことから、2016年は前年対比プラス10.5%となり、2012年から5年連続してプラスという結果に終わりました。
2017年の滑り出しは比較的順調だったのですが、冒頭に述べたように、ここに来て前年同月マイナスが続いています。
その理由として、大都市圏においては賃貸住宅を建てる土地がだんだん少なくなってきたこと、再開発案件や立ち退き案件が増え、建設するまでに時間がかかっていることを理由に挙げています。
一方、深刻なのは地方都市の様相です。かなりの受注減の状態にあります。賃貸住宅市場の潮目が変わったと思われます。
2017年もあと1か月、3月末の年度末まではあと4か月となりました。
この先の賃貸住宅市場は、これまで述べてきたように、人口減少が予測されているような地方都市を中心にネガティブな状況に向かっていくものと思われます。
また、大都市においても、マンション価格に頭打ち感が出てきました。
しかし、低金利が続いていますので、それほど大きな不動産市況減退にはつながらないと思いますが、2018年半ばに向けて徐々にトーンダウンしていくものと予想します。それに対して、勢いが止まらないのが、ワンルームマンションの市場です。こちらの勢いはしばらく続くと予想されます。