第2回目のコラムでは,第1回目の続きとして、「賃貸借契約の成立と終了に関する諸問題」のうち,終了の部分についてご説明します。
地主様や建物のオーナー様としては,賃借人の方にいかに気持ちよく退去していただくかによって,将来のトラブル防止にもなり,賃料未払いなど賃借人の債務不履行による損害の拡大を防止することは重要な関心事となってきます。
今回は,土地の賃貸借と建物の賃貸借と分けて検討します。
1.土地の賃貸借契約について
借地契約が終了するのは以下の㋐~㋒の場合です。
㋐賃貸人と賃借人との合意で解約した場合
㋑賃貸期間が満了し更新されなかった場合
㋒借地人が地代を払わない,土地の使用方法に違反があったなど債務不履行があったことを理由に賃貸人が解除した場合
建物買取請求権
㋐合意解約の場合には問題が生じることはないでしょう。
では,㋑のような期間満了による契約終了の場合には,どのような問題が生じるでしょうか。
ここでは、借地の賃貸借事例で考えてみましょう。
借地人は地主に対して借地上の建物の買い取りを請求できます(借地借家法13条1項)。
借地人が建物買取請求権を行使すると,借地人と地主との間に建物の売買契約が成立したものと同じ効果が生じます。これを形成権といいます。
借地人は,建物買取請求権を行使すれば,地主から建物売買代金の支払があるまで土地明渡を拒むことができます。
では,建物買取請求権が行使されたら,いくらで建物を買い取る必要があるのか,地主さんにとっては非常に大きな問題です。
一般的に,売買代金は,買取請求権が行使されたときの時価であり,その内容は建物が現存するままの状態での価額とされています(最判昭和35年12月20日民集14巻14号3130頁)。
なお,借地人の債務不履行によって賃貸借契約が解除された場合には建物買取請求権は認められません(最判昭和35年2月9日民集14巻1号108頁)。
地代滞納に対する対処方法
㋒のように地代に滞納が発生したケースにおいて,賃貸人はどのように手続を進めていくべきでしょうか。
地代の滞納が相当期間継続する場合には,一般的に,借地人の債務不履行に背信性が認められますので地主は賃貸借契約を解除することができます。
手続の流れとしては,まず,地主が借地人に対して相当の期間を定めて地代支払いの催告をします。催告期間内に支払がなければ解除をします。なお,解除の効力は解除通知が借地人に到達することによって発生しますので,解除通知は内容証明郵便で行う必要があります。
ところが,地代を滞納しているケースでは,そもそも建物を収去して土地を明け渡すだけの資力が借地人にないことが多いのが実情です。
そうすると,土地賃貸借契約を解除しても借地人が自主的に建物を収去して土地を明け渡さない場合には,訴訟をしていくことが必要になります。
ただし,訴訟を提起する前に,建物の占有移転を禁止する仮処分を申し立てておくことが必要です。判決の効力は当事者にしか及びませんので,明渡し訴訟が継続している間に地主が知らないところで建物の占有を勝手に第三者に移転されないようにするためです。そのうえで,建物収去土地明渡しと滞納している地代を請求する訴訟を提起していきます。請求を認容する判決がでて確定したら強制執行も可能です。
2.借家契約について
無催告解除
借家契約においても,契約が終了するのは借地契約の㋐~㋒と同じです。
では,借家契約において,家賃の滞納が1回だけでも催告もなしに解除ができるとの条項がある場合,この条項は有効といえるでしょうか。
賃貸借契約のような継続的契約関係は当事者間の信頼関係を基礎にしているといわれます。そのため,賃貸人による解除が認められるためには,背信性が認められることが必要となります(最判昭和27年4月27日民集6巻4号451頁)。
したがって,家賃1回の滞納だけでは一般的には背信性は認められないと思われます。では,何か月滞納すれば背信性が認められるのでしょうか。この点については明確な基準があるわけでなく,事案により区々ではありますが,3か月~半年程度が目安となります。
滞納賃料に対する対処方法
家賃の滞納に対する対処方法としては,地代の場合と同様ですが滞納が始まった時の初動が肝心です。とはいえ,勝手に鍵を変える,悪質な取り立てをすることは不法行為となり損害賠償責任を負うことになりますので注意してください。家主としては,滞納賃料が大きくなる前に賃借人の自主的な退去に向けた話し合いをすることなども大切です。