4つの地価があるのはなぜ?~土地の価格について~

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毎年1月1日時点の公示地価が3月に発表されます。この寄稿がホームページに掲載される頃には,ちょうど新聞紙面も取り上げられていると思います。9月には「路線価」が発表されていますが,この違いはどうなっているのでしょうか。

同じ地域(場所)なのに価格が違うため,一般の方には分かりにくいと言えます。

これは,価格を決定・公表する理由の違いからくるものです。まずは,それぞれの趣旨から説明します。

まずは、メディアなどでも一番大きく取り上げる公示地価から説明して参ります。

 

1 公示地価とは

地価公示法に基づき、国土交通省の土地鑑定委員会が毎年1回公示する価格のことです。その年の1月1日時点の価格を3月中旬に発表します。

公示地価は,土地の取引価格に対して指標を示すほか,公共事業用地の取得価格算定のための規準とするなど,適正な地価の形成に寄与することを目的としたものです。

次に述べる路線価のように,課税目的で評価するものではありません。したがって,国内全ての土地について公示されるものではなく,都市計画区域内の土地または省令で定められた区域の特定の土地(標準地)が対象となります。

売主買主の個別の事情(例えば,安くても早く売りたい売主の事情や,実家の近くなので高くても買いたい買主の事情など)は考えず,更地として土地の効用が最高度に発揮できる使用方法を想定したうえでの評価が行なわれます。

 

2 路線価とは

次に、路線価について説明します。

路線価には「相続税路線価」と「固定資産税路線価」(固定資産税評価額を決める際の基準となる価格)の2種類がありますが,一般的に路線価といえば「相続税路線価」のことをいいます(この稿で「路線価」というときは相続税路線価のことをいいます)。路線価は,相続税法に基づき,国税庁がその年の1月1日時点の価格を7月初旬に公表します。

路線価は,相続税及び贈与税の算定基準となる土地評価額で,課税する目的で決定する価格です。

路線価は,「路線(道)」に対して価格が決められます。路線に面する土地はすべて同じという考え方です。ただし,適宜,敷地の形状などに応じて個々に補正を行います。公示地価の8割程度が目安とされています。

 

3 実際の土地の価格は?

以上のとおり,公示地価は土地の適正価格の形成目的,路線価は課税目的で決定・公表するものですので,どちらが「正しい」土地の価格ということはありません。

また,この他,公的機関が決定・発表するものに,「基準地価(都道府県基準地価格)」「固定資産税評価額」などがありますが,それぞれ,価格決定の趣旨が異なります。

これらを含めて、四つの価格があります。(公示地価、路線価、基準地価、固定資産税評価額)

 

実際に取引される個別的な土地の価格は,売主買主双方の事情に大きく左右されます。公的機関が発表する価格に加え,近隣の取引事例など様々な要因を基に最終的に売買の当事者間で決定されます。

よく,「不動産取引はタイミング」といいますが,土地取引での価格に関してはこのタイミングによって取引される金額が一番「正しい価格」なのかも知れません。