指数でみると木造住宅は5割超の上昇
建設物価調査会の建設物価建築費指数(東京、2015年平均=100)で2026年7月分をみると、住宅(木造)は152.3、集合住宅(RC造)は146.5となっています。基準となる2015年から10年余りで、木造住宅は5割超、RC造の集合住宅も5割近く工事原価が上昇した計算になります。国土交通省の建設工事費デフレーター(2015年度=100)でも、建設総合は2025年12月時点で133.2の水準にあり、指数の算出方法の違いによって数字に幅はあるものの、3割から5割という上昇幅となっています。なお、10年前はRC造の集合住宅のほうが上昇率で先行していましたが、近年は木造住宅がそれを上回る局面が続いています。木材価格に加え、住宅設備機器や省エネ仕様の負担が木造住宅により強く効いていることの表れでしょう。
実額でみると、単価は4割超上がっている
住宅金融支援機構のフラット35利用者調査をみれば(下記アドレス参照)、注文住宅(土地を取得しないケース)の全国平均を10年前と比べると、建設費は2015年度の3,226万円から2025年度は4,260万円へ、1,034万円、率にして32.0%の上昇です。ただし、この32%という数字は実態を過小に表していそうです。同じ期間に平均住宅面積は129.4㎡から118.4㎡へ、11㎡ほど縮んでいるからです。面積で割り戻した1㎡当たりの単価でみると、24.9万円から36.0万円へ44.3%の上昇となります。坪単価に直せば、およそ82万円から119万円です。土地付注文住宅でも、㎡単価は22.8万円から33.9万円へ48.8%上がっています。つまりこの10年、住宅取得者は「家を小さくする」ことでコスト増の一部を吸収してきたということです。総額の伸びが3割にとどまって見えるのは、その調整が効いていたためであり、同じ家を同じ仕様で建てた場合の上昇率はほぼ5割に近いとみるべきでしょう。
購入者サイドに立てば、この差は無視できません。同じ調査で注文住宅利用者の平均世帯年収は、2015年度の601万円から2025年度は719万円へ19.7%増えました。収入が2割伸びる間に、建設費は3割、単価では4割超上がったことになります。所得の伸びが建築費の上昇に追いついていない状態が10年続いてきたわけで、住宅取得のハードルが上がったという実感には、はっきりとした根拠があります。
10年を四つの局面で振り返る
第1期は2015年から2019年です。東京五輪関連の特需と、上昇を続ける公共工事設計労務単価を背景に、年1~2%程度の緩やかな上昇が続きました。この時期の上昇は、まだ「景気循環の一部」として受け止められていました。
第2期が2020年から2022年です。コロナ禍での米国の住宅ブームと海上物流の混乱がウッドショックを引き起こし、経済産業省の分析では2021年12月時点で製材の輸入価格が前年同月比132%、集成材が同135%という異常な上昇となりました。ここに鋼材が急騰するアイアンショックとロシアのウクライナ侵攻、そして円安が重なります。建築費のグラフの傾きが明確に変わったのが、この局面です。
第3期は2023年から2024年。資材市況は一服しましたが、代わって労務費が上昇の主役になりました。2024年4月に建設業へ時間外労働の上限規制が適用され、担い手不足がコストに直結する構造が定着します。
第4期が2025年以降です。2025年4月の省エネ基準適合義務化により、住宅の仕様水準そのものが底上げされました。加えて円安の再燃と、中東情勢に伴う石油系資材の供給制約が重なっています。
この10年で何が変わったのか
振り返って重要なのは、上昇の中身が入れ替わったことです。かつての建築費上昇は資材市況の循環であり、上がれば下がるものでした。しかし現在積み上がっているのは、14年連続で上昇している労務単価と、法規制による仕様水準の底上げという、市況が反転しても下がらない要素です。円安も一時的な変動ではなく、構造的な前提になりつつあります。
したがって、建築費が10年前の水準に戻る展開は考えにくいと言わざるを得ません。そして、面積を削ることで吸収する余地も、すでにかなり小さくなっています。
この10年の変化を象徴するのが、2025年度のフラット35利用者調査で、中古住宅の利用割合が35.9%と、2004年度の調査開始以来、初めて注文住宅や分譲住宅を上回ったことです。建築費の上昇は、単に価格の問題にとどまらず、住宅取得者の選択そのものを新築から中古へと動かし始めています。次の10年を考えるうえで、この構造変化は見落とせません。
(参考)
住宅金融支援機構「2025年度 フラット35利用者調査」(2026年7月24日公表)
https://www.jhf.go.jp/files/topics/4941_ext_99_1.pdf
住宅金融支援機構「2015年度 フラット35利用者調査」
https://www.jhf.go.jp/files/a/public/jhf/300316078.pdf

