住宅系も事業系も、そろって5%台後半
建設物価調査会が8月10日に公表した2026年7月分の建設物価建築費指数(東京、2015年=100)は、集合住宅(RC造)が146.5で前年同月比5.4%の上昇、事務所(S造)が145.3で同5.4%の上昇、工場(S造)が143.8で同5.4%の上昇、住宅(木造)が152.3で同6.4%の上昇となりました。住宅系と事業系のいずれも5%台後半から6%台で、用途による差はほとんど見られません。資材と労務という共通の投入コストが、すべての建物種別を同時に押し上げている状況です。
資材面はさらに強い動きです。同会の建設資材物価指数(7月分、全国平均)は、建設総合が151.4となり前月比0.9%、前年同月比6.2%の上昇で、20カ月連続のプラスとなりました。建築部門は150.1で同5.9%の上昇、土木部門は156.5で同7.4%の上昇と最高値を更新しています。
為替と資源、二つの不確実性
為替は、さらに円安方向へ振れています。8月3日の日米協調介入でドル円は一時155円台まで急落しましたが、8月25日には159円台前半までになっています。介入は上値を抑えたものの、円安圧力そのものは解消していません。市場では9月17日・18日の日銀金融政策決定会合で政策金利が1.25%へ引き上げられるとの見方が強まっており、その状況によって輸入資材コストに影響がでそうです。
資源面は方向感が定まりません。7月はOPECプラス主要国の増産表明を受けた原油の急落が指数の押し下げに働きましたが、8月下旬には対イラン制裁の強化観測から原油が反発しています。ナフサを原料とする塗料、断熱材、防水材、塩化ビニル管などでは、価格上昇に加えて納期遅延や受注停止といった供給制約が続いており、これは価格指数には表れにくいコスト要因です。工期の長期化という形で、工事費に間接的にはね返ります。
下がりにくくなった労務費
見通しを考えるうえで決定的なのは労務費です。国土交通省が令和8年3月から適用した公共工事設計労務単価は、全国全職種加重平均で25,834円と初めて2万5千円を超え、14年連続の上昇となりました。全国全職種単純平均の伸び率は4.5%です。加えて、改正建設業法に基づく労務費の基準により、民間工事や下請取引においても適正な労務費の確保が求められる枠組みが整いました。
資材価格は相場で決まりますから、円高や資源安が進めば安くなります。しかし労務費は、制度と担い手不足の双方に支えられており、いったん上がった水準が下がることは考えにくいところです。工事費が下がる可能性は、以前よりなくなっているとみるべきでしょう。
需要側も工事費を下支えする
建設経済研究所などが7月27日に公表した見通しでは、2026年度の建設投資は83兆2,600億円と前年度比6.3%増で、30年ぶりに80兆円を超える見込みです。2027年度は86兆円台となり、1992年度の過去最高を更新すると予測されています。新設住宅着工戸数も2026年度が76.0万戸で6.8%増、2027年度も75.6万戸と高い水準が続く見通しです。国土強靱化を軸とする政府投資、都市部の再開発、半導体・データセンター関連の設備投資が同時に走っており、施工能力の側に余裕が生まれにくい状況です。このような旺盛な需要も建築費上昇につながります。
今後の見立てと対応
以上を踏まえると、建築工事費は当面上昇が続き、上昇率が鈍化する局面はあっても、水準そのものが下落する可能性は低いとみられます。仮に円高や資源安が進んでも、それは伸び率の鈍化として表れるにとどまり、労務費と需要が下値を支えます。「いずれ落ち着く」という前提で建築の計画を先送りすることは、合理的な判断ではないでしょう。
金利上昇局面では工事費と調達金利が同時に上がるため、建て替えや改築プロジェクトにおいての事業採算性の検証は従来以上に保守的に行う必要があります。工事費が下がるのを待つのではなく、上がる前提で計画しておく。それが今後数年の基本姿勢になるでしょう。

