賃料上昇にともなう賃貸住宅ニーズの変化

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 全国的に家賃の上昇が顕著となってきました。なかでも沖縄県は大きく上昇しています。とくに、離島や本島北部など、需要が旺盛でありながら供給が少ない地域では、上昇幅が大きくなっているようです。実際、名護市など本島北部のシングル向きマンション(30㎡以下)の平均家賃は、2024年に5万8,477円と2022年比で43.1%も上昇しました。26年の路線価でも、県内で最も上昇率が高かったのは名護市為又の+16.3%であり、この地域の需要の強さがうかがえます。その一方で、家賃の上昇に伴い、入居者も賃貸住宅選びに関して慎重となってきています。

賃貸住宅賃料の上昇と入居者ニーズ

 賃貸住宅の建築コストは、過去10年以上上昇し続けており、とくに21年以降は大きく上昇しました。国土交通省の「建設工事費デフレーター」でみても、建設総合はこの10年で3割程度上昇しています。この傾向は住宅全般に言えることですが、この先もまだまだ上昇する可能性が高そうです。また、賃貸住宅においても、共用部の設備品のほか、多くの備品においても価格上昇しています。

 建築費上昇だけでは、賃貸住宅経営の投資採算性は悪化しますが、賃料の上昇がそれを補う形となり、賃貸住宅投資(=賃貸住宅経営)は、引き続き活況となっています。全国の主要都市では、22年半ばころからの物価上昇にともない賃料も徐々に上昇しています。賃料には「遅効性」という特徴があり、物件価格上昇からやや遅れる傾向にありますが、それでもここ数年は賃料上昇が顕著となってきました。

 賃料の上昇は入居者負担が増えるわけですが、それに伴い入居者の方も、「それに見合う暮らしができるか」を、慎重に見極めた物件選びとなっています。その流れの中で、「いまや賃貸住宅では当たり前」の設備品があるか、付帯設備があるか、などを確認して選択しているようです。

セキュリティーの次に当たり前化する付帯設備は?

 単独世帯が増え、賃貸住宅に住む方が増えている現代ですが、エントランスのオートロック、エレベーター内の防犯カメラ、玄関のダブルロック(二重鍵)などセキュリティーレベルが高い賃貸住宅はいまや「当たり前」となってきました。

「これから必須の賃貸住宅の付帯設備」を考える時には、「昨今の生活スタイルを考えると必須となりつつあるもの」と「分譲マンションでは当たり前のもの」がカギになると思われます。インターネット、宅配ボックスなどは、前者に該当し、セキュリティ関連は後者に該当します。

 賃貸住宅需要の中心は、いつの時代も単独世帯やカップル世帯が中心ですが、広さでは概ね25~50㎡程度が中心的なゾーンとなります。この広さ・間取りを考えれば、単身者やカップル世帯が生活するうえで必要な付帯設備はすでに整っており、室内で今後「当たり前化」すると思われる付帯設備はあまり考えにくいと思われます。

 しかし、賃料の上昇が続いている中で、またマンション建築費が上昇している中で、1戸当たりの面積は狭くなっており、狭くなっているのは収納スペースという状況となっています。そこで、収納スペースの外出し化も徐々に増えてきました。宅配型のトランクルームを1棟の単位で契約して、そこを入居者が利用するというようなサービスもあります。入居者が利用状況に応じて払うタイプや、賃料に含まれているタイプなど、利用費用は様々ですが、都市部における賃貸住宅で、このような「宅配型トランクルーム」を備えることで、建物スペースを使うことなく、収納スペースを確保することができているようです。

増える高齢単身者の賃貸住宅暮らしに応えるサービスは?

 今後、需要が急増すると思われるのは、未婚高齢単身者の賃貸住宅需要です。生涯未婚率(50歳時点未婚率)が男女とも急上昇しており、2020年には男性28.3%、女性17.8%(国立社会保障・人口問題研究所、2020年国勢調査の不詳補完値による)となっています。また、沖縄県の持ち家率は42.6%(2023年)と全国で最も低く(全国は60.9%)、賃貸住宅で暮らす方が過半を占めるという特徴があります。

 国立社会保障・人口問題研究所が2024年(令和6年)4月12日に公表した推計「日本の世帯数の将来推計(全国推計)-令和6(2024)年推計-」によれば、2020~50年の間に65歳以上男性の独居率は16.4%→26.1%、女性は23.6%→29.3%と大幅増加となります。特に男性の単独世帯化が大きく進む見通しです。また、2020~50年の間に、高齢単独世帯に占める未婚者の割合は、男性33.7%→59.7%、女性は11.9%→30.2%となり、近親者のいない高齢単独世帯が急増することになります。

 これらのデータから予想されることは、若いころからずっと賃貸住宅に住んでいた、結婚経験のない方が、高齢者(65歳以上)となり、引き続き賃貸住宅に住む、という方が急増するということです。総務省「令和5年住宅・土地統計調査」でみれば、現在の高齢単身世帯は持ち家が中心で借家の割合は33.5%にとどまりますが、未婚のまま高齢期を迎える層が増えることで、この構成は今後大きく変わっていくと考えられます。

 こうした方々の求める賃貸住宅を考えれば、設備でいえば、手すり等の高齢者対応ということになります。一方で、ソフト面の拡充は必要であり、緊急時の駆けつけ対応(見守り対応)、近親者のいない場合の入居時の保証人などの対応、建物内でのコミュニティ形成促進、といったことが求められると思われます。

 賃貸住宅の付帯設備は、すでにかなり整っていると思われます。そのため、「新たな設備が備わる」は、つまり「建築費が上昇する」、ということになりますので、設備面よりも、ソフト面のサービス付加が検討されるのが今後のトレンドとなると思われます。

(参考リンク)
・国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」 
https://www.rosenka.nta.go.jp/

・総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」
https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/index.html

・国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)令和6(2024)年推計」 
https://www.ipss.go.jp/pp-ajsetai/j/HPRJ2024/t-page.asp

・国土交通省「建設工事費デフレーター」 
https://www.mlit.go.jp/statistics/details/t-other-2_tk_000362.html

・アットホーム「沖縄県の家賃動向調査」(2025年6月26日) 
https://www.athome.co.jp/corporate/news/data/questionnaire/junglia-yachin-202506/