長期国債金利の動向
直近1年間、長期金利(10年物国債利回り)は歴史的なペースで上昇いたしました。月平均ベースで見ますと、2025年6月の1.512%から2026年5月には2.540%へと、わずか1年で約1ポイント上昇しております。特に2026年5月中旬には一時2.8%台と、約29年半ぶりの高水準に達しました。超長期ゾーンの上昇はさらに顕著で、5月18日時点で30年国債が4.000%、40年国債が4.006%と、イールドカーブ全体で歴史的な水準切り上げが進んでおります。
上昇要因は主に3点に整理できます。第一に、日銀の金融政策正常化です。2024年3月のマイナス金利解除に続き、2025年12月19日の金融政策決定会合では政策金利を0.50%から0.75%へ引き上げ、約30年ぶりの水準となりました。第二に、2024年7月以降段階的に進む日銀の長期国債買入れ減額計画です。最大の買い手の購入縮小により、債券需給が緩み続けています。第三に、補正予算による国債増発観測、中東情勢の混乱に伴う原油高、それを背景としたインフレ警戒の強まりが、債券売り圧力を高めています。
大手銀行(メガバンク等5行)10年固定金利の動向
長期金利の上昇を受け、大手銀行の住宅ローン固定金利は連続的に引き上げが続いております。三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、三井住友信託銀行、りそな銀行の大手5行平均では、10年固定の最優遇金利が2026年6月時点で3.556%(前月比+0.27ポイント)となり、上昇は11か月連続です。直近1年間で5行平均は約1.6ポイントの上昇となっており、これは新発10年国債利回りの上昇幅(約1.0ポイント)を上回ります。固定金利の原資となるスワップレートや超長期金利が、ベンチマークたる10年国債利回り以上に上昇していることが背景にあります。
2026年6月の個別行の動きを見ると、みずほ銀行は前月比+0.3ポイントの大幅引き上げを実施するなど、各行とも明確な金利引き上げ姿勢を継続しています。一方、住宅購入者の8割近くが選好する変動金利型については、メガバンクの最優遇金利が0.945%(三菱UFJ)から1.275%(三井住友)の水準にとどまり、固定金利型との金利差は2.5ポイント前後まで拡大しております。
まとめ
約5年前まで1%台前半で推移していた大手銀行の10年固定金利が、わずか1年で1.6ポイント上昇して3.5%台に到達したことは、住宅ローン市場および金融市場の前提条件が大きく変化したことを示しております。長期金利の上昇幅(約1.0ポイント)を上回るペースで固定金利が引き上げられている点は、銀行の調達構造の変化、すなわち長期・超長期ゾーンでの調達コスト上昇が、10年国債のヘッドライン以上に進行していることを示唆しております。
日銀は2026年4月会合で政策金利を据え置きましたが、市場は年内の追加利上げ(政策金利1.00%程度まで)を織り込みつつあります。長期金利の上昇圧力は当面継続する公算が大きく、大手銀行の10年固定金利についても、3%台後半から4%台への突入も視野に入る局面と考えられます。「金利のある世界」が定着しつつあるなかで、住宅取得や不動産事業の意思決定にあたっては、さらなる金利上昇を前提としたシミュレーションが不可欠といえるでしょう。

