沖縄県は長年、日本で最も高齢化率の低い県として知られてきました。しかし、近年その構造は急速に変化しています。2023年10月時点の住宅・土地統計調査(2024年9月確報公表)、国立社会保障・人口問題研究所の令和5年推計、そして2025年10月時点の沖縄県人口移動報告を重ね合わせると、「持ち家率全国最下位」「全国最速の高齢化進行」「高い単身高齢世帯比率」という三つの要素が複雑に絡み合い、沖縄県の賃貸住宅需要に独特の影響を及ぼしつつあることが見えてきます。
高齢化のスピードは全国最速水準
沖縄県の高齢化率は、令和5(2023)年10月1日現在で23.5%となっており、依然として全国最下位水準にとどまります。ただし、これは「まだ、高齢化が進んでいない」という意味ではなく、「これから、急速に高齢化が進む」と捉える必要があります。
国立社会保障・人口問題研究所の推計(2024年推計)によれば、沖縄県の65歳以上人口は、令和2(2020)年の約33万人から、令和32(2050)年には約47万人へと増加する見込みです。2020年と比較した65歳以上人口の伸び率は、全国平均の1.08倍に対し、沖縄県は1.41倍と、全国で最も大きい伸び率、つまりこれから最も高齢化が進む県ということになります。
加えて、北部圏域および宮古圏域の高齢化率は既に27~28%に達しており、離島町村13自治体のうち7自治体では高齢化率が30%を超えています。さらに、沖縄県の総人口は2025年10月1日時点で146万6,454人と、3年連続で減少しています。「日本で最後に高齢化する県」から、「急ピッチで高齢化が進む県」へと転換しつつあるといえます。
ただし、注意しておきたいのは、ここでいう県内人口は、住民票の数ですので、沖縄県では多く見られる一定期間仕事のための来県している方の多くは住民票を移していないと思われますのでカウントされていません。
また、当然ながら年間約1000万人と言われる入域者(多くは観光客)は含まれておらず、また米軍関係者(家族など含む)約5万人程度も含まれていません。
突出した賃貸住宅傾向と単身高齢世帯の急増
沖縄県の住宅市場における最大の特徴は、持ち家比率の低さです。令和5年住宅・土地統計調査によれば、沖縄県の持ち家比率は42.6%であり、これは47都道府県中最も低い水準となっております。1998年の55.3%から25年間で12.7ポイント下落しており、下落幅も全国最大です。これに対し共同住宅の比率は60.9%と、東京都(71.6%)に次ぐ全国2位の水準であり、構造的に「賃貸住宅の県」であることがわかります。
注目すべきは、こうした賃貸住宅依存型の構造の中で、高齢世帯の増加が始まっていることです。沖縄県では、65歳以上の世帯員がいる主世帯の割合が36.5%と過去最高を更新し、5年前から3ポイント上昇しました。さらに、高齢者のいる世帯に占める「高齢単身世帯」の比率は34.9%で過去最高となっており、全国平均(=32.1%)を上回ります。沖縄県の高齢者のいる世帯の賃貸住宅比率は31.8%で、全国平均(18.2%)を13.6ポイントも上回っており、「賃貸住宅で老いる」高齢者が圧倒的に多いという構造が浮かび上がります。
賃貸住宅市場への影響と政策の動き
このような状況は、沖縄県の賃貸住宅市場に需要・供給両面で大きな意味を持ちます。需要面では、夫婦のみ世帯から単身世帯への移行(配偶者との死別)や生涯未婚率の上昇により、コンパクトでバリアフリー対応の高齢者向け賃貸需要が今後一段と拡大するでしょう。また、供給面では、貸し手側に孤独死、残置物処理、家賃滞納、緊急連絡先の欠如といったリスク懸念があり、単身高齢者の入居を拒む事例が依然として見受けられます。
こうした課題に対応するため、「改正住宅セーフティネット法」が2025年10月1日に施行されました。同法は「居住サポート住宅」の創設や、認定家賃債務保証業者制度の創設(緊急連絡先について居住支援法人などの法人指定を認める運用を含む)により、単身高齢者等の要配慮者が円滑に入居できる仕組みを整備するものです。
また、既存賃貸住宅におけるバリアフリー改修や、サービス付き高齢者向け住宅などの整備が急務となっていると言えます。
最後に
沖縄県の賃貸住宅市場は、これまで生産年齢人口の単身者や若年ファミリーを主たる需要層として拡大してきましたが、今後は「単身高齢世帯」が新たな主要需要層として急速に台頭してくるでしょう。賃貸住宅オーナーや管理会社にとっては、リスクをいかに制御しつつ、確実に存在する高齢者賃貸需要を取り込むかが、収益安定化の鍵を握ることになります。 家賃債務保証会社との連携、居住支援法人との協力体制構築、バリアフリー改修と高齢者対応設備の導入など、複合的なリスク管理の枠組みが、今後の沖縄県内における賃貸事業運営の標準となっていくものと思われます。

