沖縄県では賃貸住宅に住む世帯の割合が全国で最も多く、とくに全国的に見ても単身世帯者の多くが賃貸住宅に住んでいます。しかし、単身高齢者などの要配慮者に対しては、賃貸住宅所有者(オーナー・大家)が賃貸することを拒む例が見られます。これは、孤独死の可能性や仮に死亡した後の残置物処理をどうするかなどといった現実的な事が背景にあります。また、入居中においても、「家賃滞納リスクが高い」、「何かあった場合に連絡する先がわからない」という不安もあります。
我が国では2000年以降単独世帯の増加がみられましたが、これからは(あるいはすでに)、「単独高齢世帯」が急増することが確実です。これらの方々が円滑に賃貸住宅に入居できるような法律が「住宅セーフティーネット法」です。この法律が改正され、25年10月1日から施行されました。
単身高齢者はどれくらい増えるのか
65歳以上の世帯で単独世帯は、20年には738万世帯が50年には1084万世帯へと1.47倍に増えます。75歳以上の世帯では同1.69倍に、85歳以上の世帯では1.88倍となります。これからの30年、我が国では高齢者の単独世帯が急増するということになりそうです。
「令和5年住宅・土地統計調査」によれば、高齢者のいる世帯が賃貸住宅に居住する割合は全世帯では18.2%ですが、これを高齢者単独世帯に限れば32.2%と1/3が賃貸住宅に住んでいるようです。なお、この賃貸住宅のうち65.5%は民営の賃貸住宅です。
高齢者単独世帯が今後大きく増える予測の要因として、「配偶者の死別」と合わせて、「生涯未婚率が上昇し続けている」も大きいと思われます。独身の方々は、現役の間は賃貸住宅に住むことが多いわけですが、おそらく高齢者になっても(リタイアしても)そのまま賃貸住宅に住むことを選ぶ方が多いと思われます。このような「ずっと賃貸住宅に住んできた」単身高齢者が今後急増すると思われます。
高齢者向け賃貸借契約のハードル
今後、高齢者による賃貸住宅需要が増えることが確実視されていますが、貸し手(オーナー:大家)の立場に立てば、難しい点もあります。
①室内での転倒などの事故、孤独死など健康面のリスク
②収入の面や資金的なリスク
③保証人(緊急時連絡先)がいないというリスク
とくに、今後生涯未婚率が増える中での高齢単身者が増えれば、①や③は大きな問題となりそうです。
住宅セーフティーネット
そこで、このような単身高齢者等(=住宅確保要配慮者)に貸す側と入居者がともに安心して賃貸借契約ができるよう、「居住サポート住宅」や「家賃保証に関する新制度」を創設しました。
これまでも、以下の2点は国が対策を行ってきました。
①“賃貸借契約が相続されない” 仕組みの推進
②“残置物処理に困らない” 仕組みの普及
今回の改正に際して、以下の2つが創設されました。
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001760404.pdf
③“家賃の滞納に困らない” 仕組みの創設
単身高齢者等の要配慮者が利用しやすい家賃債務保証業者(認定保証業者)を国土交通大臣が認定します。この業者認定基準は、居住サポート住宅に入居する要配慮者の家賃債務保証を原則として引き受けます。また、家賃債務保証の契約条件として、緊急連絡先を親族などの個人に限定しない(=法人も指定できる)ことになります。
こうしたことで、賃貸住宅所有オーナーは、単身高齢者等に安心して住宅を貸せるようになります。また、逆に入居者が家賃滞納可能性を理由に入居を断られるリスクが減ることになります。
そして
④“入居後の変化やトラブルに対応できる” 住宅の創設
「入居後の変化やトラブルに対応できる」住宅は、「居住サポート住宅」として、都道府県に指定された「居住支援法人」大家がオーナーと入居者を結びつけ、入居者をサポートする賃貸住宅です。
制度が普及することは、大きな意味があると思われます。

