投資用賃貸住宅の用地不足の状況

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 24年の全国の貸家(=賃貸住宅)の新規建築数は、国土交通省「新設住宅着工戸数」の貸家のデータをみれば、概ね昨年並みの年間34万戸台ペースとなっています。「持ち家」や「分譲戸建」が大きく落としている中で、「貸家」だけが健闘しているという状況です。沖縄県内においても、貸家の着工戸数は順調に推移しており、県内では年間合計が昨年比でプラスとなる見通しです。
 しかし、多くの全国主要都市で見られる傾向として、これまでの賃貸住宅が主に建てられていた地域から、少し外れた地域での建築が進んでいるようです。

首都圏の投資用マンションの供給状況

 貸家つまり賃貸住宅は、投資用の賃貸物件です。一般的に「投資用マンション」といえば、1棟単位で分譲されるマンションではなく、分譲マンションのうち、区分で販売されることを前提とした、投資用の物件ということになります。首都圏や関西圏、名古屋圏などで多く見られますが、このうち首都圏での供給状況は、(株)不動産経済研究所が集計し、公表しています。

 (株)不動産経済研究所が24年8月6日に公表した資料によれば、首都圏で23年の1年間に発売された投資用マンションは105物件で4796戸でした。22年は131物件、5961戸でしたので物件数・戸数とも約2割減少となっています。
 また、24年上期(1~6月)に供給された投資用マンションは56物件で2167戸でした。単純に2倍すれば112物件、4334戸となります。また、1戸あたりの平均㎡数は概ね26㎡程度で推移しています。

投資用賃貸住宅の用地不足の状況|資産活用総研 大鏡建設

上のグラフは09年1月から23年までの間で首都圏で供給された新築投資用マンションの平均㎡単価の推移を示しています。13年以降は、概ね右肩上がりで上昇しており、23年はこの間で最高の124.9万円/ ㎡となりました。(22年比で+2.9%)。グラフをみれば、時々前年より減少している年もありますが、その要因は新規物件の立地にあると考えられます。とくに、21年は新規供給エリアの上位に都心中心部が外れ、その一方で川崎市や横浜市がランクインしました。

グラフをみれば分かるように、新規に供給される投資用マンションの価格は上昇を続けています。その上、新規供給物件は東京23区内では用地(マンション適地)仕入れの競争が一層激しくなっており、さらに横浜市や川崎市の新築物件が増えるものと思われます。また、千葉県西部(市川市や船橋市など)や埼玉県の南部も今後は増えてくるものと予想します。

沖縄県でも賃貸住宅の適地減少、中古市場の拡大

 沖縄県においても、首都圏と同様の傾向が起こっているようです。
これまでの賃貸住宅の建築地は、那覇市、浦添市、豊見城市などの南部の那覇に近いエリアや宜野湾市や西原町や北谷町周辺でしたが、糸満市、南風原町、東風平町、などの南部の郊外、あるいは沖縄市などの中部の郊外へと拡大しているようです。

背景には、
①主要部では、保有する遊休地の活用が進んでいること
新規に土地を購入しての建築では、
②近年では住宅地・商業地とも地価が上昇しているため、想定する利回りを得ることができないこと ③用地を購入する際に競合が多いこと
などがあると思われます。

 このようなことを鑑みれば、首都圏と同じように、投資用賃貸住宅では新築物件の供給が少ないことから、中古物件の需要が拡大してくる可能性もあるでしょう。