資産の組み換え戦略の考え方

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 不動産市況が活性化してくると価格が上昇傾向となり、保有している収益不動産(投資用不動産)を売却しようと考える方が増えます。一方で、まだ上昇は続くと考える方や、これから始めようとされる方は、物件購入をします。株式市場と同じで、市場が活性化している時は、当然ながら売りと買いが同時に増える状況となります。
 異次元の金融緩和政策により、土地活用として賃貸住宅を建築する方、あるいは収益不動産を購入する方が全国的に増えたのが2014~18年頃で、沖縄県においても同時期に新設住宅着工戸数における「貸家」(=賃貸用住宅)の建築が増えました。この間に建てられた賃貸住宅は10年を超え始めます。

 今回は、資産形成を加速化させるために「資産の組み換え」について解説しましょう。

資産の組み換えこそが、不動産資産形成の王道

 不動産投資において、「資産の組み換え」を行うことは、資産を確実に増やす為の王道です。例えば、日本で発売される「不動産投資に関する書籍」や「不動産投資のセミナー」では、とくに初心者向けが多く、その内容は「他の投資と比較して不動産投資の優位性」や「どんな物件を選べば安心か」などが中心で、「保有する不動産資産の売却」についての言及は多くありません。しかし、アメリカで書かれた不動産投資関連や資産形成関連の書籍では、「資産は組み替えることで増える」ことの重要性が書かれており、多くのページがさかれています。
 日本においては、一度保有した土地や不動産資産をずっと持ち続ける傾向にあります。古代に遡れば農耕民族だった日本人の特性なのでしょうか。
 自宅などではこの気持ちは分かりますが、投資用に保有しているつまり収益を上げるために保有している物件では、タイミングを見て売却することで、より多くの収益を上げることを検討していいと思われます。

 たしかに、賃貸住宅として貸すことで賃料を得る収益不動産においては、年単位でのキャッシュフローがプラスならば、「利益を生み出す資産」ですから、「このままでいいかな」と考える投資家の方も多いことでしょう。また、特に会社勤めの方が行う賃貸住宅経営はいわば副業ですので、「売却や新規購入など検討するのは面倒」という考えなのかもしれません。
 株式投資においても、会社員の方は、一度購入したら「そのまま放ったらかし」、そして時々、株価や資産の状況を確認するという方が多いようです。
 不動産投資における醍醐味は様々あります。ざっとあげると、①投資にレバレッジが効くこと ②節税可能性があること ③インカムゲインがあること ④キャピタルゲインがあること 等ですが、 先ほどの書籍の例や、「不動産投資セミナー」のようなものでは、①・②・③を取り上げることが多くなっており、④についてはあまり触れないというのが実情です。

株も不動産も、資産の組み換えが王道

 しかし、不動産投資のプロ(つまりそれを職業をしている企業)では、不動産投資の狙いは、圧倒的に④のキャピタルゲイン狙いです。これは、資産の運用を行う全てのビジネスで同じことです。
 例えば、株式投資では多くの投資家は、昔の証券会社の営業担当者は「この株上がると思いますよ」というような営業トークをしていたように、1株1000円で買った株が2000円になった(2倍になった!)というように資産上昇を狙います。もちろん、インカムゲインである配当をメインに考える投資家の方もおられますが、見知る限りではキャピタルゲイン狙いの方が多いようです。しかし、1000円の株が2000円になったとしてもそれを売却しない限り、その利益は「絵にかいた餅」です。もちろん株式投資では、グロース株狙いで長期保有を基本スタイルとしている投資家もいます。しかし、株式投資で儲けている方の多くは(少なくとも、それを職業としている方や企業は)、ある価格まで上昇すれば「利益確定=利確」を行い、その利益を元手に、新たな銘柄へ投資を行う、ということを繰り返しています。資産の組み換えを積極的に行い、ベストなポートフォリオを構築しているということです。

 また、不動産証券化商品であるJREITでは、各銘柄をアセットマネジメント会社が運用し、その運用益を投資家に還元する仕組みです。その収益(=配当原資)をみれば、ポートフォリオに組み込まれている各物件からの賃料から経費などを引いたもの(これを巡航収益と言います)、と譲渡益(売却価格-取得価格)から成り立っています。そして、巡航収益を落とさないために新たな物件を購入します。ここでも資産の組み換えが行われています。
 資産形成を加速させるための一案として、保有収益不動産の売却検討は有効と思われます。ここ10年くらい、不動産価格上昇が続いているなかで、売却益の出る物件も多いと思われます。いまこそ、「資産形成を加速化するチャンス」なのかもしれません。