24年1月30日に、2023年1年間の人口移動報告が総務省より発表されました。
地域を超えての移動の際には、たいてい住居の転居が伴います。また、人口の増減は、住まいだけでなく商業施設をはじめとした各種不動産の稼働状況にも影響を与えます。つまり、「人が動くは、需要が動く」ということになります。今回は、全国と沖縄県の最新の人口移動状況について解説します。
23年年間の人口移動の全体俯瞰
2023年1年間に都道府県を跨ぐ移動をした方(日本人+外国人)は、254万4639人となり前年比-0.3%となりました。移動した方の数は、20年に大きく減少後、21年・22年と増えましたが、23年はわずかに減少しました。
5歳刻みの階級別では、20~24歳が58万2420人で最も多く、つぎに25~29歳が52万7960人、30~34歳が31万518人となっています。最も移動が少ないのは、中学・高校生の年代で、20代・30代がピークでその後はなだらかに減少し、65歳を超えるとかなりその数は少なくなります。こうしてみれば、都道府県を跨ぐ移動は、進学や就職、転職での移動が大半だと思われます。
都道府県別の状況
次に、転入・転出の状況を都道府県別に見てみましょう。
転入者数は10都府県で増加、増加数では東京都がトップ、増加率では沖縄県が+4.5%でトップでした。
23年の年間に転入者が最も多かった東京都は45万4133人、次に神奈川県23万6543人、以下、埼玉県、大阪府、千葉県、愛知県、福岡県と続きます。この7都府県が10万人以上の転入者数で、全国の転入者の56.9%をしめています。
一方、転出者数は、転入者が多い東京、神奈川、大阪、埼玉、千葉、愛知、福岡と続きます。転出者数が最も減ったのは東京都で昨年よりも1万5916人減少(-4%)しました。逆に転出数増減を率でみれば、増加したのは大分県が3.9%の増加、次いで山口県が3.4%の増加、群馬県が3.2%の増加となっています。
転入超過、転出超過の状況
ここからは、転入者から転出者を引いた転入超過数(引き算がプラスの場合は転入超過、マイナスの場合は転出超過です)について見てみます。
転入超過は全国47都道府県のうち、東京都・神奈川県・大阪府・埼玉県・千葉県・滋賀県・福岡圏の7都府県(昨年と同数)となっています。このうち、東京都、神奈川県、大阪府では、転入超過数が増えました。東京都では6万8285人の転入超過で、昨年よりも3万262人増え、増加数トップでした。
逆に、40道府県は転出超過となっています。
転出超過数が最も多かったのは広島県の1万1409人で、昨年も最も多かったのですが昨年よりも2202人増えました。次いで愛知県7408人と続きます。
昨年より転出超過数が増えたのは31道府県となっています。
沖縄県の状況
沖縄県は、23年年間の転入者数は28,847 人、22年は27,615人でしたので、 1,232人の増加(+4.5%)この増加率は全国トップでした。23年5月に新型コロナウイルスが第5類に移行し観光関連業が再び忙しくなったことなどが要因と思われます。年間の転出者数は 29,337人、22年は 28,966でしたので、371人の増加(+1.3 %)となりました。転入と転出の差は、-490となり、わずかですが転出超過となっています。22年は1,351人の転出超過でしたので、 増減は+861人でした。
先に転入超過は7都府県とお伝えしましたが、転出超過40道府県のうち、沖縄県が最も少なくなっています。
3大都市圏は転入超過か?
次に3大都市圏(東京圏、大阪圏、名古屋圏)全体では10万7635人の転入超過となり昨年よりも2万6681人増えています。大都市圏に人口が集中しているように見えますが、各圏別でみれば、転入超過は東京圏だけで、大阪圏、名古屋圏は転出超過となっています。東京圏は12万6615人の転入超過(前年比+2万6996人)、大阪圏は559人の転出超過(前年比-1788人)、名古屋圏は1万8321人の転出超過(前年比+2103人)となっており、東京圏(≒首都圏)だけに集中していることが分かります。
長期的な傾向をみれば、昭和30年代、40年代(1955年~75年)は都市への人口流入が進み、地方農村部から都市部への人口移動が進みました。この時には、3大都市圏全てが、同じような傾向で転入超過が続いていました。例えば、東北地方や信越地方から首都圏へ移動、四国や山陰地方から大阪圏へ移動、という移動がメインでした。しかし、この傾向はオイルショック前後からなくなり、大都市部の中でもとりわけ東京圏への集中傾向が続くようになりました。特にバブル崩壊以降1990年代後半からは、確かに地方圏から大阪圏や名古屋圏の流入もありますが、それ以上に大阪圏や名古屋圏から東京圏への転出が増えている、ということが要因としてあげられます。
東京圏の転入超過は、20年に減少しましたが、21年以降は緩やかに拡大傾向にあります。また、東京圏への転入超過を月別にみれば、23年の1年間はどの月も転入超過ですが、例年、3月の転入超過が圧倒的に多くなっています。進学や就職が理由での東京圏への流入ということがよく分かります。
市町村別と年代別の人口移動
この報告では市町村別のデータもあります。市町村を跨いで移動した人数の集計では、全国1719市町村(東京23区は1市とカウント)のうち、転入超過は29.7%、転出超過は70.3%となっており、3:7の割合となっています。
最も転入超過数が多いのは東京23区で、次に大阪市、横浜市、札幌市、福岡市、さいたま市、川崎市、千葉市と順当な並びとなっています。しかし、次に9番目に多いのは昨年26位だった茅ヶ崎市、10番目は昨年25位だった平塚市となっています。湘南エリアへの移住者が増えている様子が分かります。
また、これを年齢3区分(0~14歳:若年層、15~64歳:生産者層、65歳以上:高齢層)に分けてみれば、興味深い結果が見えます。
生産者人口とよばれる15~64歳だけの転入超過は、東京23区が圧倒的に多く7万4309人で、2位の大阪市1万6171人を大きく引き離しています。
また、65歳以上の高齢者に限れば、札幌市が1位、2位は福岡市となっており、それぞれ、北海道内の中心都市、九州の中心都市として、人口が増えている市の特徴が、出ている数字となっています。
沖縄県内の状況
沖縄県内の市町村は41ありますが、そのうち19では転入超過、22が転出超過となりました。転入超過の割合は46.3%で、これは47都道府県で5番目に多く(愛知県と同率)なっています。過疎化が進んでいる地域が少ないといえるのでしょう。
まとめ
就職や進学により都道府県を跨いだ移動を行う場合、これらの方々の多くは移動先では賃貸住宅に住みます。また高齢者の移動の場合も、高齢者向けサービス付きの住宅や、高齢者向け賃貸住宅に住む例も多く見られます。
こうした人口移動の状況は、現状の賃貸住宅需要の動向を知る、分かりやすいデータと言えます。