2050年の全国と沖縄県の人口推計と賃貸住宅需要

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 「将来の日本の、そして各都市の人口・世帯数がどのような変遷をたどるのか」は住宅需要・賃貸住宅需要に大きな影響を与えます。将来人口・世帯数の推計は、国立社会保障・人口問題研究所が行っており、それをもとに国の様々な政策(社会保険など)が編まれているようです。今回の原稿では、23年4月と12月に公表された「将来推計人口」と「長期的な賃貸住宅需要」ついて解説します。(注:以下の推計数字は出生中位、死亡中位のものです。)

将来推計人口とは

 将来推計人口は、5年に一度行われる国勢調査に基づいて、その概ね3~4年後に、国立社会保障・人口問題研究所(1939年に設立された厚生省人口問題研究所が源流)が推計を行い公表しているものです。前回結果は2015年の国勢調査に基づき2019年に推計されたもの、前々回は2010年の国勢調査基づき2014年に推計されたものとなっています。

2070年には人口3割減

 23年4月26日に公表された「日本の将来推計人口(令和5年推計)」では、50年後の2070年には、総人口((在留外国人を含む、以下同じ)が現在から3割減少し、20年国勢調査では1億2615万人が70年には8700万人になる推計となっています。減少スピードは前回推計(2015年の国勢調査をもとに2019年に推計したもの)よりも、わずかに緩むものの、かなりインパクトある推計となっています。ちなみに、日本の人口が1億人を割るのは、2065年ごろと見込まれています。

 また、2070年には65歳以上の高齢者は、およそ4割を占めるようになります。先進国でも最も高齢化が進んでいる日本ですが、その傾向がいっそう顕著になる見通しです。

沖縄県の将来推計人口

 次に、23年12月22日には、「地域別将来推計人口」が同研究所より発表されました。この推計は、2020年に行われた国勢調査をもとに、2050年までの向こう30年間を5年刻みで推計が行われました。向こう30年(2050年まで)の推計は、都道府県別で大きな差が出る結果となり、東京都と沖縄県の強さが浮き彫りになっています。

 2015年の国勢調査から2020年の国勢調査間には、39の道府県で人口が減少しました。次回の国勢調査の年である2025年までの5年間には、東京都を除く46の道府県で人口が減少すると推計されています。東京都は社会増(人口移動)が寄与して、25年以降も人口が増え続ける唯一の都市となり、20年を100とすれば35年は102.9、50年には102.5となります。

 沖縄県は人口減少が始まっていますが、出生率の高さからその減少はわずかにとどまります。2035年の沖縄県の人口は20年を100とすれば98.9となり、東京都に次ぐ率となります。主要都府県では、大阪府が92.4、愛知県は95.6、首都圏では埼玉県と千葉県が96.7、神奈川県は97.6となっています。

 また、2050年の数字でも沖縄県は東京に次ぐ値となっています。東京は2020年を100とすれば102.5ですが、沖縄県は94.8となっています。90を超えるのは、東京・沖縄のほかは埼玉(90.3)、千葉(90.5)、神奈川(92.3)のみで、最も低い秋田県は58.4と現在より4割以上人口減少します。

沖縄では65歳以上人口が圧倒的に増える

 これを世代別(0~14歳、15~64歳、65歳以上)で見れば、若年層とよばれる0~14歳は、2035年は83.7、50年には78.5となり、沖縄でも少子化が進む見通しです。生産者人口とよばれる15~64歳では35年は93.7、50年には82.0となります。これらの値は全て東京がもっとも大きく、沖縄と首都圏の他の県が続く状況です。

 一方で、沖縄県で圧倒的に増えるのが高齢者と言われる65歳以上の人口です。高齢化がますます進むといわれる日本ですが、すでに高齢化が進む地方都市では、高齢者の死亡が増えるため、高齢者人口も減少し始めます。
 東京など大都市ではすでに高齢者が多くなっていますが、これから10年くらいの間に高齢化が進みます。

 沖縄県は、これまで生産者人口が大半を占めていましたが、これから一気に高齢化が進みます。35年には121.9(全国1位の増加率)、50年には141.1となり、2020年から2050年の増加率は全国ダントツ1位となります。

住宅需要・賃貸住宅需要の長期見通し

 このように将来人口の推計をみれば、沖縄県では今後人口は減りますが、それは僅かずつであり、賃貸住宅需要を長期的に安定的に維持できるでしょう。また、高齢者が増えることは確実で、高齢者向け住宅の需要がこれから一気に高まるでしょう。