いつまで建設工事費の上昇は続くのか?なぜ、上昇は止まらないのか?

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 引き続き物価上昇が続いています。様々な物の値段が上がっている中で、建設工事費関連の価格も同様に価格上昇が続いています。

 これまで、建築工事費は2013年頃から上昇が目立ち始めましたが、その後も工事費は上昇しており、まだまだ上昇する見通しです。ここでは、今後の建設工事費の見通しについて解説します。

消費者物価指数

 物価の変動を示す消費者物価指数をみれば、執筆時最新の2023年9月分(生鮮食料品を除いたコア指数)は前年同月比プラス2.8%となり13カ月ぶりに3%を下回りました。しかし、生鮮食料品とエネルギー価格を除いた通称「コアコア指数」はプラス4.2%と依然高い伸びをしめしています。この先、多少伸び率は下がるもののコア指数では2%台の伸びが続くものと予想されています。
 物価の上昇と同じように工事費の上昇も、再び顕著になってきました。

建設工事費上昇の現状

 最新分(=23年8月分:23年10月末国土交通省発表)の建設工事費デフレーターの状況を見てみましょう。

いつまで建設工事費の上昇は続くのか?なぜ、上昇は止まらないのか?|資産活用総研 大鏡建設

 グラフは、2020年1月からの建て方別の建設工事費デフレーターの推移です。
住宅建設工事費は、2013年ごろからジワジワと上昇が続いていましたが、2020年の新型コロナウイルスの影響が広まった頃に一時的に僅かに下がったものの、2021年に入って上昇が顕著になってきました。とくに、「ウッドショック」と呼ばれた木材の急激な需要の高まりから、木造住宅の工事費は21年後半から22年の前半にかけて2ケタの上昇率が続きました。

 木材価格の高騰が見られたことに加えて、建築資材の多くを輸入に頼っている我が国においては、原材料生産国でのインフレの影響を受けた事、また円安が進行していること、などが要因でした。

 その後上昇率は徐々に低くなり、価格は高止まりながらも落ち着く様相でした。しかし、23年5月には再び前年同月比は上昇に転じています。2015年の年間平均を100とすれば、どの建て方の工事費も2割以上の上昇となっています。

さらなる工事費上昇の見通し、その背景

 しかし、今後もさらに工事費は上昇する可能性が高そうです。

 その要因としては、以下のような事があげられます。

1. 輸入建築資材の価格高騰
 多くの建築資材を輸入に頼る現状のため、世界の多くの国々で物価上昇の影響を強く受けます。また、円安が続いており、執筆時のドル円相場は1ドル=151円台で推移しており、2021年年始は103~4円台でしたので、この時期と比較すれば1.5倍程度になっています。

2. 輸送コストの上昇
 原材料を船で運ぶ、陸送する、重機を動かす、全て石油を使います。23年11月に入り多少原油価格は落ち着いてきたものの、以前高値が続いています。また、建築現場まで建築資材を運ぶ費用なども上昇しています。物流に携わる方々(ドライバーなど)の人件費が大きく上昇しており、2024年4月からはドライバーの労働時間(残業時間)の上限が決められ、人手不足も深刻になることは確実視されており、人件費の上昇、そして輸送コストはさらに上がると思われます。
 さらに次に述べるように、建設業就業者人件費がさらに上昇する可能性があることです。

建設業界の24年問題

 建設工事費の上昇に拍車をかけることになりそうなのが、「建設業界の2024年問題」と言われる、24年4月から働き方改革による残業上限規制が施行されることです。ドライバーや医師とともに、建設業労働者も5年猶予されていた働き方改革が適用され、これによりただでさえ人手不足が深刻なことにより労働人件費が上昇、残業を依頼することもできなくなり工期が伸びることで、結果、工事費の上昇は確実と思われます。すでに、これから受注する工事においては、このように人件費上昇を見越した見積もりが提示されているようです。

今後の見通し

 ここまでみてきたように建設工事費の上昇は、まだまだこれからということになりそうです。その要因を鑑みれば、よほど需要が低迷しない限り、「しばらくは、建設工事費が下がりそうな気配はない」と言っていいでしょう。
 そうだとすれば、ここしばらくの間では「いまが、工事費の最安値」という可能性は極めて高いと思われます。