インフレ対応と賃貸住宅経営

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 インフレに強い資産と言われる賃貸用不動産。土地活用として賃貸住宅経営を始める方、分譲される賃貸住宅を購入される方、区分マンションに投資される方が、ますます増えており、全国主要都市のキャップレートはどこも最低水準となっています。

 ここでは、インフレになれば、なぜ賃貸用不動産、賃貸住宅を購入する方が増えるのか、について考えてみます。

物価上昇の状況

 23年9月(執筆時最新)の全国消費者物価指数は、生鮮食料品を除いたコアCPIが前年同月比プラス2.8%でした。ここまでの物価上昇は、原材料費の上昇によるところが大きいようですが、この先徐々に賃金上昇が広まってくれば、コストプッシュ型の物価上昇から、経済循環によるインフレへと移行することも考えられます。「インフレ率を状況に合わせて適切に導くこと」が日銀の大きな役割ですが、これからの鍵取りに注目が集まります。

【インフレに強い資産と弱い資産】

 インフレになれば、現金資産を現金としてそのまま持ち続けた場合は、現金の価値が目減りしてしまいます。インフレに弱い資産としては、

① 現金
② 定額年金、運用性の高い終身・養老保険
③ 預金(特に長期の定期預金)
④ 債券(特に満期までの期間が長期のもの)
などがあります。

 一方で、インフレに強い資産としては、物価上昇に連動して価格上昇する、賃料収入のある資産、そして価値にブレの少ないものということになります。
例えば、

① 土地
② 不動産
③ コモディティ(金など)
などです。

 不動産を所有するメリットの1つにインフレ・ヘッジがあげられます。
 長期的に現金を運用しようとした場合には,物価が大きく上昇すれば,その資産そのものが目減りしてしまうということが最大のリスクであると言えるでしょう。インフレが起こったときに資産インフレも同時に起これば,そのリスクを回避することができるわけです。また,家賃(帰属家賃含む)は、消費者物価指数の約20~25%程度の寄与率があることを考えれば,物価が上がるということは家賃も上がる可能性が高くなります。このように考えれば,賃料収入がある不動産へ投資(賃貸住宅の建築含む)は、インフレ防衛策ということになるわけです。

【賃料は物価上昇に遅れて上昇】

 先に述べたように、賃料はインフレ期には上昇圧力がかかります。逆にデフレ基調の時には賃料下落圧力がかかります民間家賃も物価の1つですので、これは当然の流れと言えます。(ただし、デフレ期にも、特に住宅家賃は大きな下落は見られません)
 しかし、賃料には「遅効性」という性質があり、インフレになると直ちに家賃上昇ということにはなりません(下落も同じです)。
 賃貸住宅の契約は、2年ごと更新というのが一般的ですので、2年以上の好景気が続くと、上昇が顕著になります。ちょっとした単年の景気変化では、あまり大きな変化はないということです。

 これまでを見れば、例えば2013年以降、経済市況・不動産市況とも徐々に好転してきましたが、賃料上昇が数字見られるようになったのは、2018年頃以降のことです。また、家賃の上昇は、大都市部から地方主要都市への波及が見られましたが、過疎化が進むような地方では変わらずの状況のようです。

 冒頭で述べたように、我が国で物価上昇が顕著になってきたのは、22年の半ばくらいからです。いまの流れが続くとすれば、家賃の上昇は24年に入れば、顕著になってくるものと思われます。