沖縄県の持ち家比率と賃貸住宅志向はどこまで進むのか?

shisan_202310c.jpg

 沖縄県における持ち家比率は、大きく低下しています。住宅価格が高くなり、「手が出ない」からという理由もあるかもしれませんが、「賃貸住宅で充分」、「賃貸住宅の方がスマートな暮らしができる」という「積極的賃貸派」とよばれる方々が増えてきました。持ち家志向の低下は以前から言われてきましたが、2020年のコロナ禍を経てさらに低下しているのでは、との声も聞かれます。本稿では、まず沖縄県の持ち家比率の状況を確認したうえで、23年5月に国土交通省より公表された「令和4年度土地問題に関する国民の意識調査」の中から、「住宅の所有」に関する意識調査の項目にフォーカスして「賃貸住宅志向の変化」について見てみましょう。

沖縄県における持ち家比率低下の現状

沖縄県における持ち家比率は一貫して低下しています。本土に遅れて近代化が進み、都市部に住む方が増えた事、大家族から核家族化が進んだこと、人口が一貫して増えていること等が要因と考えられます。

沖縄県の持ち家比率と賃貸住宅志向はどこまで進むのか?|資産活用総研 大鏡建設

 図1は、5年ごとに調査される「住宅・土地統計調査」(総務省)によれば、1988年から最新調査の2018年まで一貫して低下しています。1988年には57.7%の持ち家比率は、2018年には44.4%となりました。

沖縄県の持ち家比率と賃貸住宅志向はどこまで進むのか?|資産活用総研 大鏡建設

 図2は、都道府県別に1998年と2018年の持ち家比率を比較したものです。これをみれば、最も持ち家比率が低下したのは沖縄県で、10.9ポイントも減少しています。

持ち家志向低下の背景

 沖縄県の独自の要因以外に、一般的に持ち家志向の低下の背景には、以下のような要因があると思われます。

①大きなローンを背負いたくない
②フレキシブルで自由な暮らしがよい
③賃貸住宅の方が近隣との関係が面倒でなくて暮らしやすい

また、賃貸と所有で迷う方では
④近年の住宅価格の著しい上昇
も、合わせて影響しているものと思われます。

いづれにしても、賃貸住宅の住まいレベルの向上は著しく、所有より賃貸を選ぶ方が増えているようです。

    

持ち家志向の低下がさらに進む。住宅の所有意思について

「土地問題に関する国民の意識調査」(調査実施期間:令和4年11月22日~令和5年2月20日)は、土地の所有、住宅の所有に関する多岐にわたるアンケート調査が行われていますが、今回が31回(31年)目を迎えますが、この間一貫して持ち家志向の低下が続いています。

 「ご自身が住む為の住宅の所有・賃借についてどのようにお考えですか」
という質問項目では、「土地・建物については、両方とも所有したい」と答えた方の割合が65.5%で、最も多い回答でした(調査開始以来ずっと)。しかし、平成23年(2011年)までは、この回答率は8割を超えていましたが、その後持ち家志向の低下傾向は一気に進み、はじめて7割を切ったのは令和2年(2020年)で、最新の結果2022年は65.5%で、このままのペースでは、数年後には6割を切る可能性もありそうです。

 また、賃貸志向の方の割合をみれば、「借家(賃貸住宅)で構わない、又は望ましい」と答えた方は15.1%でした。昨年とほぼ同じ割合で、ここ10年は、10~17%の間で推移しています。
 この項目からは、「持ち家志向の低下が一貫して続いている」こと、そして「賃貸志向の上昇はこのところ頭打ち」という状況が見えます。

 その一方で、ここ4回の調査で大きく増えたのが「わからない」と回答した方の割合です。
 令和元年(2019年)までは、一ケタだったものが、その後令和2年(2020年)以降は13%台~16%台で推移しています。

住宅所有について、「わからない」が2020年以降、急に増えた背景として
①新型コロナウイルスの影響で住まい方、働き方の変化があったこと
②近年の住宅価格の高騰で、「今後の住まいのあり方」について様子を伺っていること
などが、要因でしょう。

 この「わからない」と回答された方々のたいていは現在賃貸住宅に住んでいると想像できます。「このまま賃貸」か「いつかは所有」なのか、動向に注目しておきたいものです。

性別で持ち家志向は変わるのか

 男女別で回答をみれば、「土地・建物については、両方とも所有したい」と答えた男性の割合は69.3%、女性は61.8%と男性の方が高くなっています。男女ともに減少傾向にはありますが、男性の方が「住宅の所有意欲」が高く、「住宅」という資産に関する考え方に多少の違いがあるものと思われます。

 一方で、賃貸志向の方の割合で男女の違いはあまりなく、「借家(賃貸住宅)で構わない、又は望ましい」の回答では男性15.2%、女性15.1%となっています。

 また、「わからない」と回答した男性は10.4%、女性は16.4%となっており、こちらでは大きな差が出ています。結婚・出産、働き方などにおいて、まだまだ男女違いがあるからなのでしょうか。

大都市と地方都市で差があるのか

 最後に、人口規模で違いを見てみましょう。

 政令指定都市における「借家(賃貸住宅)で構わない、又は望ましい」の回答は、23.2%で全国の15.1%を大きく上回っています。大都市部では若年層が多く、全国の年齢層別では30歳以下では同回答は28.5%となっていることからも、都市部では賃貸志向が相対的に強いと考えられます。また、「土地・建物については、両方所有したい」と回答した割合は、10万人未満の市に住む方で割合が高く、全国では65.5%のところが72.8%になっています。

 3大都市圏に住む方が5割を超えている現在の我が国では、こうした調査結果を見ていると、さらに賃貸住宅志向が進みそうな状況といえそうです。