現在のオフィスビル市況と県内企業がビルに求める要素

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 新型コロナウイルスがまん延し始めたのは20年3月頃から、そして4月には政府の要請を受けて全国の多くの企業が出社制限をかけました。21年以降は徐々に出社する頻度を増やし、流行状況を見計らいながらの状況が続きましたが、23年に入ると概ねコロナ禍前に戻っているようです。

 具体的な数字で見れば、我が国ではオフィス出社率はコロナ禍前の約8割程度となっており、在宅勤務を週1回行うイメージです。オフィスの利用率もこれと同水準です。

 ちなみに、米国では出社率は約5割となっており、そのため街の人流はコロナ禍前の状況ですが、オフィスは閑散としているようです。オフィスビル解約が進み、空室がかなり目立っており、オフィスREIT価格も落ち込んでいます。そのため、オフィスビルだけでなく、オフィスビル周辺の商業施設も不調で、商業用不動産(オフィスビル・商業施設など)全般的に状況は厳しく、これらに貸し付けている金融機関も危うさを見せ始めているようです。

2023年7月現在のオフィス市況の全体俯瞰

 オフィス系シンクタンクが出している直近のオフィス市況レポート(23年第一四半期)や月次レポートなどから、23年7月時点でのオフィス市況の現状をまとめておきます。

 23年に入り、一定の在宅勤務は残るものの、出社制限をかけていた企業で出社頻度をコロナ禍前に戻す動きが見られています。また、人員を増やす企業が増えてきており、それにともないオフィッス床面積拡大欲求が高まり、拡張・移転の動きが一部で見られています。都市部では、人気エリアでは、一時期増えた空室が減少しています。新規契約の募集賃料から成約賃料では、20年秋ごろから見られた「賃料を下げての募集活動」は減少傾向にあり、賃料水準はピーク時より低いものの、下げ感には落ち着きが見られ始めています。この傾向は、大型ビルだけでなく中小ビルにも見られ始めているようです。

 ただし、空室率の上昇は落ち着く傾向にあるものの、コロナ禍前に比べて高い空室率が続いています。地域によっては、今後オフィスビルの供給過剰懸念があります。

 こうしてみると、現在のオフィス市況は、おおむね底を打った状況にあると言えるでしょう。ただし、今後の大都市部での供給過剰の懸念は残ります。また、地方都市においては、高スペックビルの新築物件が増えているようですが、賃料についてこられる企業は一部にとどまっており、空室も多いようです。

成長企業とオフィス

 オフィス市況が再び活性化するためには、牽引役となるオフィス活用意識の高い企業の動向が気になります。

 長期成長を続ける企業、近年成長が著しい企業、将来IPOを目指すベンチャー企業、資金調達を行い事業拡大志向が明確な急成長企業などでは、つねに優秀人材を募集しています。

 企業は、優秀人材を確保するために、事業の将来性、企業の将来性などを明確に示したうえで、給与などの待遇面とともに、ワークスペースの魅力をアピールする例が多く見られます。企業の採用ページなどには、オフィス内の様子が掲載されており、「こんな場所で働きたい」という想いを誘っています。

 昨今の多くの企業では、個人毎の机をなくしフリーアドレスが広まることで、多少デスクスペースは削減されました。その一方で、クリエイティブワークに相応しいミーティングスペースや、リラックスルーム、くつろぎのカフェスペースなどが取り入れられ、結果的に以前より広い床面積を求める企業が増えています。こうした傾向は大手企業でも進んでおり、それまでの床面積の削減から、増加に転じている企業も少なくありません。この傾向は今後、空き面積の解消につながっていくでしょう。ただし、オフィス賃貸に積極だった外資系企業の一部で、オフィス活用の勢いが減退し、一部解約などが止まっていない状況は気になるところです。

県内企業がオフィスビルに求める事

 大都市部の勢いのあるベンチャー企業では、21-22年にかけて見られたオフィス賃料下落を受けて、より好立地物件、(=ステイタスの高い物件)へ移転する企業もありました。

 ここでいう、「オフィスビルのステイタス」を分解してみれば、立地ブランドイメージ、ビルのブランドイメージ、築年数、ビルのサイズ、交通アクセスのよさ、周辺地域の利便性、どんなテナントが入居しているか、などがあげられます。このような要素においてポイントの高い物件は、多少賃料が高くても入居率好調が続くでしょう。

 一方で、沖縄県内企業では、「ビルのステイタス」にこだわらず「実」をとる企業が多いようです。 つまり、築年数やオフィスビルの大きさ、ビルのブランド等にこだわらずに、求める広さ(床面積)が確保できた上で、「駐車場が十分に確保できる」、「車移動における交通アクセスがよい」という要素を最重要視している企業が多く見られます。