2022年の新設住宅着工戸数の俯瞰
1月31日、国土交通省から2022年12月の「新設住宅着工戸数」が発表されました。これにより、2022年12カ月分の新設住宅着工戸数が出そろったことになります。
22年の1年を振り返れば、ざっくりとして傾向では、「絶好調な賃貸住宅」と「不振の持ち家」と、明暗が分かれたという1年だったとみています。
沖縄県の状況
2022年1年間の沖縄県の新設住宅着工戸数(総数)は、9179戸で4年連続前年比減となりました。
ここからはカテゴリ別に見ていきましょう。
「持ち家」は、自宅の建替えや自分で土地を探して購入し、その上に建設会社・ハウスメーカーなどに依頼して家を建てるケースです。
22年1年間では2820戸でした2020年に多少落ち込みましたが、ここ9年くらい、3000戸前後で変わらず推移しています。
主に賃貸用住宅の建築である貸家は、3647戸となりました。沖縄県における貸家着工件数は、2018年をピークに減少しています。
しかし、長期推移をみれば、1万戸を超える年が何年も続くこともあれば、数年低迷することもあり、ブレ幅が大きい傾向にあります。金利上昇を睨みながらとなりますが、23-24年は、いくぶん回復するものと予想しています。
全国の状況
ここからは、全国の状況分析です。
カテゴリ―別に新設住宅着工戸数の前年同月比を見ると、持ち家は2021年12月から2022年12月まで、すべてマイナスでした。とくに2022年6月以降は不振を極め、前年同月比で2ケタのマイナスを続けています。これに対して貸家は、2021年3月から2022年12月まで、22カ月連続で前年同月比がプラスとなりました。
2022年の1年間の前年比を見ると、持ち家は25万3,287戸でマイナス11.3%、貸家は34万5,080戸でプラス7.4%となりました。
建築工事費上昇の影響が持ち家の需要を低迷させている?
持ち家の前年比を過去にさかのぼってみると、2021年はプラス9.4%でした。着工戸数は28万5,000戸を超えていました。また、さらにその1年前、つまり2020年の前年比は9.6%のマイナスで、着工戸数は26万1088戸でした。この時期は、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻な状況であり、前年比で9.6%のマイナスは当然とも言えますが、問題は2022年の着工戸数が、コロナ明けで経済活動が活発化してきたにもかかわらず、2020年を下回っている点にあります。たしかに、2021年の着工戸数がプラス9.4%の伸びでしたので、2022年のマイナス11.3%は反動減だったようにも見えますが、着工戸数が2020年よりも少ないことを考えると、これは反動減だけでは説明できないほど落ち込んでいると考えられます。
これは、物価上昇の影響だったのではないかと推察しています。建設工事費の動向を示す建設工事デフレーター(住宅総合、月次、2015年基準)を見ると、2017年から緩やかながら上昇していたのが、2021年以降、急角度で上昇しているのがわかります。
2022年秋口から上昇幅が縮小して、上昇そのものは頭打ちになりつつありますが、そこから下がる気配が見られません。いわゆる高止まりの状態にあります。建設工事費の上昇が続いたのは、「ウッドショック」と言われた、木材需給のひっ迫が原因の1つであると考えられます。
最後に
2023年の新設住宅着工戸数は、金利の動向しだいと、と言えるでしょう。物価上昇は23年後半に落ち着くと思いますが、その一方で「金融緩和」出口をどうするかの議論が進み、わずかずつ金利上昇が行われる可能性もあります。しかし、たとえ金利上昇が少し見られても、賃金水準上昇、賃料の上昇が進めば、好循環が生まれます。こうしたポジティブシナリオとなれば、数は大きく増えるでしょう。