人は何を求めて移動するのか? 首都圏への人口集中が再び加速

shisan_202302a.jpg

 人はどんな時に移動するのでしょう? 

就職、進学、転職、転勤、などなど、都道府県を跨ぐ移動は、たいてい「人生の大きな転機」と言えるものでしょう。そして、その多くの場合、住居の移動を伴うことになります。進学する方の増減、仕事を求めて街を出る方の増減、都道府県や市町村などを跨ぐ人の移動の動向は、社会状況を大きく反映します。
 人の移動=住居の移動と考えると、人口移動状況を分析することで住宅需要を推し量ることができます。

 さきごろ、総務省から2022年1年間の人口移動報告が発表されました(2023年1月30日発表)。この調査は住民基本台帳に基づき、都道府県や市町村を跨ぐ転入・転出といった移動者数を集計したものです。今回はこのデータを分析してみましょう。

地域をまたぐ移動が回復基調に

 2022年1年間に都道府県を跨ぐ移動をした方(日本人及び外国人含む、以下同)は255万3434人となり前年比で+7万6794人(+3.1%)となりました。移動した方の対前年の実数をみれば、20年は新型コロナウイルスの影響が大きく、2019年の1年間に移動した実数から-104904人と大幅に減少しました。21年は前年比+12648人、22年は(同)+76794人となり、都道府県を跨ぐ移動が戻ってきていることが分かります。

 新型コロナウイルス感染症の広まりから3年が経過し経済活動もほぼ正常化し、2類相当からインフルエンザ等と同じ扱いの5類への移行、マスク着用要請も緩和、日常生活がようやく正常化してきている様子がうかがえます。 

転入者と転入超過の状況

 次に、転入・転出の状況を都道府県別に見てみましょう。

 2022年の1年間に転入者が最も多かったのは東京都で約44万人、次に神奈川県約24万人となりました。埼玉県、大阪府、千葉県、愛知県と続きこれらの都府県が10万人以上の転入者数、以上7県で全国の転入者の約56%となっています。21年と比べて転入者が最も増えたのが東京都で約2万人(+4.7%)増えています。

 転入者数から転出者数を引いた値がプラスの場合は転入超過、マイナスの場合は転出超過となりますが、転入超過は全国47都道府県のうち11都府県でした。最も多いのは東京都の約3.8万人、次に神奈川県の約2.8万人となっています。前年に比べ転入超過が拡大したのは4都府県で最も拡大したのは東京都(+3.3万人)で、逆に最も縮小したのは千葉県となっています。千葉県は転入超過ですが、実数が落ち込んだのは、20-21年に多く見られたリモートワークの浸透により首都圏への移住傾向が落ち着いたものと推測されます。

再び東京の一極集中が進む

 このうち東京圏では、転入者数50万7341人、転入者数は40万7822人で9万9519人の転入超過となりました。昨年に比べて超過数は1万7820人増えました。東京都3万8023人、神奈川県2万7564人、埼玉県2万5364人、千葉県8568人と全て転入超過となっています。3大都市圏のうち、域圏を構成するすべての都府県で転入超過となっているのは東京圏のみで、東京圏(首都圏)の圧倒的な吸引力がうかがえます。

 東京都では2019年が約8.2万人の転入超過でしたが、21年には約5400人まで減少、22年は4万人弱ですので、およそ半分くらいまでもどりました。東京23区(特別区)への流入は前年比でプラス約2万人となっており、都心への人口流入が復活していることもうかがえます。一時的に落ち込んだ、東京への人口流入、東京一極集中の傾向が再び加速してきたと言えるでしょう。

沖縄県の状況

 それでは、沖縄県の状況を見てみましょう。

 2022年1年間の沖縄県への転入者は27,615人で昨年に比べて771人増えました。一方、転出者は28,966人でこちらも昨年に比べて1,915人増えました。転出超過は1,351人、前年は207人でしたので、転出超過が拡大したことになります。

 転入者数の前年比の推移をみれば、「2019年までは増えていたが、20年に減少、21年は大幅減少、22年に回復」というイメージです。転出者数の前年比の推移も似た状況です。コロナ禍の前と後で大きな変化はなく、「以前のような動きに戻った」と理解すればいいでしょう。

年代別の人口移動と賃貸マンション需要

 次に年代別の動きを見てみましょう。

 全国の移動者を5歳刻みの年齢別でみれば、最も移動が多いのは20-24歳(約58.8万人)、次に25-29歳(約52.7万人)、30-34歳(約31.2万人)、35-39歳(約20.1万人)、そして15-19歳(約14.3万人)と続きます。年齢でみれば、都道府県を跨ぐ移動が最も多いのは22歳、次に24歳となっています。こうしてみれば、都道府県を跨ぐ移動の最大の理由は「就職や仕事に関すること」だと思われます。そして次は大学や専門学校などへの進学のようです。このうち、20-24歳、25-29歳、30-34歳、35-39歳では2021年よりも移動者が増加しました。

 就職や進学により都道府県を跨いだ移動を行う場合、これらの方々の多くは移動先では賃貸マンションに住みます。とくに仕事理由による移動が復活してきていることは、賃貸マンション需要には追い風だといえるでしょう。