普遍的な賃貸住宅ニーズと増えているニーズは何か?

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 賃貸住宅入居者の物件選びのポイントは、アンケート調査を行えば常に上位をしめる「変化しない要因、普遍的な要因」と時代の流れに応じて変わる「変化する要因」に分かれるようです。

 今回は、普遍的な賃貸住宅ニーズとは何かと、増えているニーズは何か?を探ります。

住宅市場動向調査とは

 住宅市場動向調査は、国土交通省が2003年(平成13年)から毎年度実施している調査です。最新の2021年度(令和3年度)分の調査結果が22年4月末に発表されました。

 この調査は、個人の住宅建設に関して影響を受けたことや資金調達方法等についての実態を把握し、今後の住宅政策の企画立案の基礎資料とすることを目的とされています。調査対象者は、2020年(令和2年)度中(令和2年4月~令和3年3月)に住み替え・建て替え・リフォームを行った世帯を対象として、注文住宅、分譲住宅、既存(中古)住宅、民間賃貸住宅及びリフォーム住宅の別に調査を行われました。

 その中から、民間賃貸住宅(社宅など除いたもの)に住み替えた(この期間中に移転した)方々(アンケート対象:首都圏、中京圏、関西圏)の回答を元に以下考察します。

なぜその賃貸住宅を選んだのか?

 民間賃貸住宅入居世帯(以下賃貸住宅入居者と表記)における物件の選択理由は、「住宅の立地環境が良かったから」が 52.7%(集合住宅だけの結果では、54.8%)で最も多く、次に「家賃が適切だったから」が 49.6%(集合住宅だけの結果では、50.3%)、「住宅のデザイン・広さ・設備等が良かったから」が 40.0%(集合住宅だけの結果では、41.3%)となっています。ここ5年(2017年以降)の推移を見てみると、この3項目がベスト3であることに変化はありません。また、この3項目とも集合住宅だけに限った時の値の方が高くなっています。

 5年間の経年変化を見ると、「子育てに適切な環境だったから」の項目は、2017年度結果は9.4%でしたが年々ポイントを下げ、2021年度結果では4.3%となりました。

 また、「親・子供との同居や近くに住んでいたから」の項目も、10%弱の数字で推移していましたが、最新の結果では6.2%と下げています。

 この2つの減少は、高齢化が進み、未婚者の増加、少子化が進んでいる事などが背景にあると考えられます。

設備・機能の観点からの、賃貸住宅の選択基準

 賃貸住宅入居者は、住宅の選択理由となった設備・機能等として、「間取り・部屋数が適当だから」が 60.4%(集合住宅だけの結果では、59.5%)で最も多く、次に「住宅の広さが十分だから」が52.6%(集合住宅だけの結果では、52.7%)、次いで「住宅のデザインが気に入ったから」、「台所の設備・広さが十分だから」「浴室の設備・広さが十分だから」と続いています。

 この5年間の結果を見ても、「間取り・部屋数」が1位で、「住宅の広さ」が2位、「住宅のデザイン」が3位という順位は変わりません。

増えている要因、これから増え続けるであろう要因

 一方で、大きく上昇しているのが「高気密・高断熱住宅だから」の項目で、2017年度はわずか0.9%だったものが、2021年度には5.0%にまで増えています。この項目を重視する方が、ますます増えてくることは間違いないでしょう。地球環境に配慮した賃貸住宅は、国も政策に力を入れており、こうした項目を重視する入居者が増えていることは嬉しく思えます。

 また、多少の数字の波があるものの増えている項目が、「火災・地震・水害などへの安全性が高いから」です。概ね6%前後の値となっています。増えるゲリラ豪雨への警戒、30年以内に7割の確率で発生すると言われる首都直下型地震、そして南海トラフ地震などへの警戒が強まっています。こうした災害に強い賃貸住宅はますます求められてくることでしょう。

調査結果から求められる賃貸住宅の機能とは

 調査結果をみると、賃貸住宅選びは、「立地」と「家賃」が合うかどうか、で1次的な選択が行われているようです(これらは、選択基準として半数以上の方が回答)。その上で、「間取り」「広さ」「水廻り設備の充実」に目が向けられるという流れとなっています。これらは、普遍的なもののようです。その上で、エコ的な側面や防災の観点が近年上昇しています。
 今後の賃貸住宅建築での参考になる調査結果でしょう。