不動産投資の基準の1つとして多くの投資家が目安としているキャップレートですが、その最新のもの(2022年4月時点のもの)(財)日本不動産研究所から発表されました。
キャップレートについては、本サイト上で何度か取り上げてきました。この調査で発表されたキャップレートは、「現時点で、不動産投資を行う場合、どのくらいの利回りを期待するか」をデベロッパーやアセットマネージャーやレンダーなど不動産投資に携わる専門家へのアンケート調査を集計したものです。
このキャップレートは、還元利回りとも言われ、不動産の純収益(=NOI、総家賃収入から管理費や修繕費などの経費を引いたもの)を不動産価格で割って算出できます。
逆に、キャップレートから不動産価格を算出する場合、不動産価格=純収益÷キャップレートで、算出されます。賃料が変わらないとすれば、キャップレートの値が高ければ、リスクが高いと考えているということで、逆に低ければリスクが低いと投資家が判断していると言えます。また、このキャップレートが下落傾向にあると言うことは、不動産価格が上昇傾向にあると言えます。
この調査のキャップレートは三大都市と主要地方都市分しか調査されていません。また、例えば那覇もそうですが、物件種別ごとのキャップレートでは、ホテルでのキャップレートは調査されていてもレジデンスはない、という地域もあります。
それでは、賃貸住宅のキャップレートの長期推移を見てみましょう。
一棟賃貸住宅のキャップレート推移
賃貸住宅におけるキャップレートは、2008年頃までは下落が続いていましたが、リーマンショックの影響後に、一気に上昇しました。その後、徐々にキャップレートは低下を続け、現在ではミニバブル期よりも低い水準にまで下がっています。
コロナショック直後の2020年4月と10月、2021年4月調査時点では、不動産投資家が様子見をしていたせいか、横ばいが続いていましたが、以後、前回の2021年10月調査時点では、ワンルーム・ファミリーともに下落し、今回の最新調査では、ファミリータイプが2期連続の下落、ワンルームは横ばいとなりました。専門家が見た賃貸住宅市況は、コロナ禍においても、リーマンショック程の大きな下落は見られず、むしろ、投資家のポジティブな姿勢が見られます。
この調査では、同じ対象者への別の調査として、「不動産投資市場に係る今後の見通し」についての結果も公表されています。
レジテンシャル(=賃貸住宅)への投資については「ややポジティブ」と回答した割合が最も多く、2024年まではその状態が続きます。しかし、2025年以降は判断できかねると考える人が多かったようです。
それではプロパティ別に「ポジティブ」と「ややポジティブ」を考えた割合の合計を、各年で見てみましょう。
「物流施設」と「レジデンシャル」に対しては、ポジティブに考えている割合が高いのが分かります。一方、コロナ禍で大きく影響を受けた「オフィス」と「ホテル」ですが、徐々に回復してくると予想していますが、その割合は「物流施設」や「レジデンシャル」にはまだ及んでいないのが分かります。
今回の調査結果からは、人々の生活に直接かかわる「レジデンシャル」に関してはコロナ禍で大きな影響を受けることはなく、むしろ堅調で、かつ、現時点では今後もネガティブな要素がないと不動産投資家が見ていると言えるでしょう。