賃貸住宅(SRC・RC造)の工事費はどれくらい上昇しているのか?

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 東日本大震災の復興工事、東京オリンピックによる東京大改造、そしてウッドショック、さらには円安に伴う輸入コストの増加、いずれも建設・建築工事費が上昇する要因とされてきたことです。

 我が国においては2012年頃から、工事費の上昇が目立つようになりました。「東京オリンピック関連工事がひと段落する2020年からは、工事費も落ち着くのではないか」という憶測もありましたが、その後に世界を襲った新型コロナウイルスの影響により、一層の工事費上昇が続いています。

 今回は、2020年以降の住宅に関する工事費がどれくらい上昇しているのかについて解説します。

工事費デフレーターとは

 工事費の推移は、国土交通省が毎月公表している工事費デフレーターを見ると、傾向がつかめます(2月28日時点の最新データは21年12月分まで)。

 国土交通省によれば、建設工事費デフレーターとは、「建設工事に係る名目工事費を基準年度の実質額に変換する目的で、毎月作成、公表しているものである。建設工事費デフレーターは、国内の建設工事全般を対象としている。建設工事の多くは、現地一品生産という特性のため、一般の製品の物価のように市場価格の動きでは直接的にとらえることができない。そのため、建設工事費を構成する労務費や個々の資材費の価格指数をそれぞれの構成比(ウエイト)をもって総合する投入コスト型で算出する手法をとっている。」(国土交通省HP内資料引用)。

 工事費デフレーターの内容は多岐にわたりますが、ここでは、建築総合>住民総合>木造・非木造(SRC・RC)のカテゴリーを中心に解説します。(注:A>Bは、Aの中にBが含まれている。Aの方が大きなカテゴリーであることを示しています)

工事費デフレーター建築総合の動き

 図1は、2020年1月以降の工事費デフレーター(建築総合)の推移を示しています。(注:2015年基準の値です。以下同じ)

賃貸住宅(SRC・RC造)の工事費はどれくらい上昇しているのか?|資産活用総研 大鏡建設

 これを見れば、新型コロナウイルスの影響で経済的影響が最も大きかった2020年4-5月に少し下がりますが、その後2021年5月頃から、建築工事費は上昇を続けます。この上昇タイミングは、「ウッドショック」と呼ばれたタイミングと重なります。その後上昇を続けますが2021年11月をピークにして上昇は止まり、12月はまだ高止まりながらも、わずかに下がりました。


ウッドショックの背景

 2020年の後半から世界的に木材価格(丸太価格や製材価格)が上昇し始めました。我が国においても、2021年春ごろからその傾向が顕著になり「ウッドショック」と呼ばれるようになりました。

 2020年春ごろから全世界に広まった新型コロナウイルスの影響は、いったん2020年5月~6月ごろに落ち着きを見せます。7月に入るとアメリカでの住宅建築需要の増加が顕著になります。リモートワークが進み郊外に住まいを求める人が増えたこと、自宅の改装(リフォーム)をする方が増えたことに加えて、金融緩和が進み低金利になったことで借りやすくなったことなどが住宅建築増のトリガーとなったようです。こうして、アメリカにおける住宅建築許可件数は2020年7月以降2021年夏ごろまで高水準が続きます。

 いうまでもなく、住宅には多くの木材が使われていますが、世界各地で起こった大規模山火事で原材料が不足していたこと、そして新型コロナウイルスの影響で製材業者などが休業に追い込まれたことなどが重なり、供給量が少なくなっていました。堰き止められた水が一気に流れるかのように急増する木材需要に供給量が追い付かなくなったというわけです。こうして世界中で木材価格が上昇、日本にも大きな影響をもたらしたというわけです。


木造と非木造のちがい

 図2は、住宅工事費のうちの木造と非木造に分けた工事費デフレーターの推移を示しています。いま述べた、2021年5月を境にして木造住宅の工事費上昇が顕著になっています。

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住宅SRCとRCの工事費デフレーターの推移

 最後に主に賃貸住宅の工事費に該当する住宅工事費デフレーターのうち、SRCとRCの工事費デフレーターの推移を見てみましょう。

賃貸住宅(SRC・RC造)の工事費はどれくらい上昇しているのか?|資産活用総研 大鏡建設

 図3を見ると、ここまでの2つの図を大きな違いはありませんが、木造に比べるとわずかに上昇幅は小さくなっていることが分かります。また、ここに来て上昇に歯止めがかかってきましたが、以前高止まりが続いています。

 最後に、この先の予測ですが、エネルギーの源である原油の高値が続きそうであること、また円安基調が止まりそうにないこと、こうした輸入価格はますます高くなることがしばらく続きそうです。そのため、工事費は21年12月―22年1月あたりでいったん停滞した後、再び上昇カーブを描く可能性が高いと思われます。