土地価格動向・賃貸住宅市況を関係者はどう見ているか? 不動産市況DI調査の解説

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不動産市況DI調査

 今回は、公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)が年4回公表している不動産市況DI調査の最新版「第23回調査」をもとに、このところの不動産市況や賃貸住宅市況について見てみましょう。

(注:調査時点21年10月上旬、公表11月。不動産関連企業むけのアンケート調査で有効回答数は257)

DI調査について

 DI(Diffusion Index)は、景気の拡大や市況感を見る際に、分かりやすく指数化したものとして、様々な調査で用いられる手法です。内閣府の景気ウォッチャー調査や日銀短観などのDIはメディアも大きく報じるのでご存知の方も多いと思います。 

 DI調査は主にアンケートを行い、回答を収益するというシンプルな調査方法です。かつてアンケート調査は記載方式が中心でしたが、最近ではインターネットでの回答が主流です。この調査は、関係者あるいは当事者にダイレクトに聞く手法ですので現在の実態(温度感のようなもの)が、把握しやすいと思います。

 また、DI系の調査では、今回取り上げる調査もそうですが、「現在の状況」と「これから〇か月先の予測(フォワード予測)」と聞くことが多い見られます。

 ただ、あくまでの回答者の主観ですので、ブレが大きくなる傾向にあります。例えば、ネガティブ局面の時はより大きくその方向に振れる傾向だったり、ポジティブ局面におけるフォワード予測が低く出る傾向だったり、します。これはまさに日本人気質といえる傾向です。

不動産市況DIの算出方法

 今回取り上げる「不動産市況DI調査」は、アンケートを行いその結果にウエイトをかけて算出しています。アンケートは、大きく上昇(あるいは改善などポジティブなワード)、やや上昇(同)、横ばい、やや下落(あるいは減少などネガティブなワード)、大きく下落(同)の5段階の回答から選択する方式となっています。ここでのDI指数は、ポジティブ回答順に⑤-④-③-②-①とすると、(⑤×2+④)―(①×2+②)の式で算出しています(横ばい回答=③は、0として計算します)

 ここでの算出では「大きく」に対して2倍のウエイトをかけていますが、他の調査ではウエイトのかけ方が異なることもあります。

土地価格の動向

 まず全国の土地価格の動向について見てみましょう。

全国の土地価格においては、前3カ月(21年7月)と比較しての土地価格動向のDI指数は5.6でした。20年4月・7月・11月、21年1月の調査会ではマイナスでしたが、前回調査より少し下がりましたが、3回連続(概ね9か月)のプラスとなりました。この全国平均の数字を見る限り、土地価格においては新型コロナウイルスによるネガティブな影響は、ほとんどなくなっているといっていいと思います。

 また、この先3か月後の動向予測は2.9となり、この先の伸びは鈍化するような予測となっています。エリア別に見ると、関東地域では現在のDI指数9.8でトップ、また3か月後の指数は6.0でこちらは近畿地方(7.0)に次ぐ値となっています

 沖縄地方は、「九州・沖縄」で括られていますが、現在のDIは7.4、3カ月先のフォワード予測は5.6となっています

 一方で、中部地域では「やや下落している」という回答が他エリアに比べて多かったため、現状のDIはマイナス2.6、この先3か月後の予測においてはマイナス7.7となりました。このほかのエリアのDIは全てプラスの値(中国四国は±0)となっています。

賃貸住宅賃料の動向

 次に「居住用賃貸物件の賃料の動向」の項目を見てみます。

以下は、DIではなく回答数の%で表記します。

全国では、回答の75.4%が「横ばい」、6.3%が「やや上昇」、17.4%が「やや下落」と回答しています。

 関東エリアでは、「やや上昇」が11.9%と回答、また、北海道・東北・甲信越地域で25.8%が「やや下落」と回答していることが突出している点ですが、他のエリアでは概ね横ばいとの回答が圧倒的です。

 また、3か月後の予測ですが、全国では79.2%の回答が横ばいで、関東と中部を除くエリアでは、80%以上の回答が「横ばい」となっています。

 関東エリアでは12.2%、中部エリアでは7.7%が「やや上昇」と回答しており、この2エリアでは家賃上昇可能性を見込んでいる業界関係者が他エリアに比べて多くいるようです。

 九州・沖縄地域は、現況は、横ばい84.0%、やや上昇4.0%、やや下落12.0%となっています。3カ月フォワード予測は、横ばい80.0%、やや上昇4.0%、やや下落16.0%で、少しネガティブな回答が増えてるようです。

賃貸住宅の空室動向

 最後に空室率動向です。

全国では、10.3%が「やや改善」、54.0%が「横ばい」、32.1%が「やや悪化」と回答しています。

 空室率の回答は全国でかなりばらつきがあり、例えば、「やや悪化」と「大きく悪化」の合計が最も多いのが九州・沖縄地方で、次に多いのが関東地方になっています。これら2エリアでは、「横ばい」+「改善」の合計が60%を切っています。これら地域は好調が続いていましたが、その調整局面に入っているのかもしれません。

 しかし、この先3カ月後の予測では、全国・そして各エリアとも現状よりもネガティブな回答の割合が減り、ポジティブな回答の割合が増えていますので、一時的なものを考えてよいでしょう。