老朽賃貸アパート、リフォームか売却かの選択

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築20年の悩み?

 日本においては、賃貸住宅の入居者は新築物件などの築浅物件を好む傾向にあります。アメリカなど欧米諸国では、「築年数にあまりこだわらない」傾向のようですが、日本では新築物件や築浅物件に人気が集まります。

 こうした傾向から、築年数を経た物件(とくに20年を超える物件)は、築浅物件に比べてどうしても空室が出やすくなります。築20年を超えた時、「ある程度の出費を覚悟してでも、リフォームする方がいいのか?空室が減るかもしれない?」と、悩むオーナーの方が多いと思います。

 収支の状況によっても異なりますが、たいていの場合、かなり築年数が経ってくると、リフォームの事は検討した方がよいと思います。特に、水回り設備品をはじめ室内建具など、古くなるとどうしても傷みが激しくなったり、デザインが古くなったりしてしまうものに関しては、「リフォームする」というより、「取り替える」ことは最低限必要だと思います。

アパート1室のリフォームはいくらくらいかかる?

 では、どのくらいの費用がかかるのでしょうか?工事費用は地域や時期により異なります。また、設備品や材料品はグレードにより、単価が大きく異なりますが、自分で住む訳ではないので、それほどグレードの高くない、ある程度一般的なワンルームにおける一般的なグレードで金額を見ておきます。

 ワンルームにおける、入退去時などに行う原状回復工事では、クロスの張替えやちょっとしたメンテナンスなら5~10万程度で済みます。もちろん、クロスのレベル、メンテナンスのレベルによりこれよりも高くなる可能性もありますが、家賃1か月+α、程度というのが相場です。それに、加えてアクセントの入ったクロスにしたり、床を張り替えたりすると、プラス10~30万程度かかります。

 一方、先に述べたような、水廻り設備品の取り換えや建具の取り換えになると、ぐっと金額が張ります。設備品のグレードより価格は異なりますが、一度に全て行うと100万円を超える金額となります。

 原状回復程度のリフォームで済ませるか、大掛かりな取り換えリフォームを行うかは、客付き状況、つまり空室が長く続くかどうかで判断すればいいでしょう。空室が半年続くと、例えば家賃5万円の部屋だと、30万円の損失となります。こうした場合、ある程度お金をかけてもリフォームをした方がいいと判断できます。また、リフォームにかかった費用は経費算入できますので、節税にもなります。

売却するという選択肢

投資用の賃貸物件を購入された方は、2010年以降とても増えました。

 新築を購入した方の物件はまだ築年は10年未満ですから、ここまで述べたようなリフォームするかどうかで悩む時期ではないと思います。

しかし、この10年は中古アパートを購入された方もとても多いようです。投資用のアパートは2000年代前半以降に多く建てられ販売されました。これらは、そろそろ築15~20年目を迎えます。リフォーム工事に悩む時期に差し掛かります。

 昨今のアパート・マンション投資ブームは、いまだ過熱状況で、立地がいい場所等では、購入時よりも高く売れる物件も多く見られます。リフォーム工事をするのではなく、売却するという選択肢を検討してもいいかもしれません。

築10年~20年は売却にはいいタイミング

これくらいの築年数物件で売却を選択肢として考えてもいいと思える理由は、今述べたような「リフォーム工事の時期に差しかかり余分な費用が掛かるから」に加えて、築20年を超えると、入居者が付きにくくなり、つまり投資用マンションとしての資産価値が下がりますので、「資産価値が下がる前に売却しておく、という出口戦略を描けるから」も大きな理由です。

資産組み換えの第一歩

 こうして得た値上がり益を資金に新しい物件、(もう少し大きな例えばアパート等)を購入すれば、資産の組み換えが行われることになります。このようにして、まず物件の利益を確定させ、それを元手に大きな投資に挑むことができます。