2019年沖縄県の賃貸住宅着工戸数は増えたのか?

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テーマ:貸家着工戸数 2020年の展望

 2019年も残り僅かになりました。今年の全国と沖縄県の賃貸住宅市況を振り返りながら、2020年の展望を予測してみましょう。
(執筆時点(12月19日)で、2019年の住宅着工戸数データは、10月分まで公表されています。)

2013年~2018年の振り返り

2019年沖縄県の賃貸住宅着工戸数は増えたのか?|資産活用総研 大鏡建設

2012年から賃貸住宅(貸家)の着工戸数は右肩上がりで伸びてきました。しかし、2018年は、7年ぶりに前年比でマイナスとなりました。
上図は、2013年から2018年までの住宅着工件数の推移です。
2013年は消費税増税(5%→8%)の駆け込み需要で大きく伸ばしました。翌2014年はその反動減で、総数、持ち家(注文住宅)、分譲住宅(戸建、マンション)は大きくマイナスとなりましたが、貸家(賃貸住宅)は、相続税改正に備えた需要の伸びがあり、反動減を吸収する形でプラスとなりました。
その後も賃貸住宅(貸家)の着工件数は伸び続けていました。その勢いに歯止めがかかり始めたのは2017年の後半でした。そして2018年は7年ぶりのマイナスとなります。

2018年から2019年10月までの推移

 2018年は、年間約39万6000戸の貸家が建設されますが、月別で見ると前年比プラスだったのは8月だけで、他の月は全てマイナスになりました。1月と3月は二桁のマイナス、春から夏は少し盛り返してマイナス幅が減少しますが、その後 秋から年末はまた大きなマイナスとなります。

2019年沖縄県の賃貸住宅着工戸数は増えたのか?|資産活用総研 大鏡建設

 上図は2018年1月~2019年10月までの貸家着工戸数の推移と前年同月比を示したものです。
 2019年の4月以降はさらに落ち込み、マイナス15%を超える月も珍しくなります。東京都市部をはじめ大都市部では比較的数字は落ち着いていますが、地方・郊外の落ち込みが大きく起因しています。

2019年年間の貸家着工戸数を予測する

 それでは、2019年年間の貸家着工戸数を予測してみましょう。

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 2019年の11月12月が1~10月と同程度の前年比だとすると、年間の着工戸数は約34万3千戸となり、前年比マイナス13%、戸数にして約5万3000戸の減少となります。
 
着工戸数の減少は、大きく2つの要因があると思います。
1つ目は、土地活用として賃貸住宅経営を始めようと思っていた方が、2013年以降の好景気の波の中で経営に踏み切り、その需要が一巡したこと。
2つ目は、不動産投資として土地を購入して、賃貸住宅を建てるタイプの着工戸数が減少していること。これは、需要はいまだ旺盛だと思いますが、金融機関の融資姿勢がネガティブなため、増えていないと思われます。

沖縄県における2018年・2019年の賃貸住宅着工戸数

次に沖縄県の貸家(賃貸住宅)の着工戸数の推移を見てみましょう。

2019年沖縄県の賃貸住宅着工戸数は増えたのか?|資産活用総研 大鏡建設

 沖縄県においては2013年~2016年にかけて賃貸住宅着工戸数は増えましたが、その後横ばいが続いていました。しかし2018年から少し減少基調になり、2019年は10月までの数字だけで判断すると2018年比で概ね20%程度のマイナスになりそうです。

(詳細は図表参考)
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2018年年間の貸家着工戸数は11282戸でした。2019年は10月分までしか現在公表されていませんが、1~10月までで、7878戸。2018年の10月までの数字が9705戸でしたので、この割合から換算すると、9400~9700戸と計算されますが、おそらく9400戸を少し上回る程度だと思います。

 沖縄県において、賃貸住宅着工戸数が大きく減少しているのは、全国での地方都市での傾向に加えて、本島中心部、本島西海岸部、宮古島など代表的な離島などにおいて、地価上昇がすさまじい勢いで進んでおり、適地が不足していること。さらに、適地が賃貸住宅ではなく、他の例えばホテル用地などに利用(あるいは買収)されていることも大きな要因だと思います。

事業会社が始める賃貸住宅経営は増えている

 一方、2018年、2019年に賃貸住宅建築で増えたのは、事業会社による賃貸住宅の建築です。これは、都市部だけでなく地方都市でも顕著に見られる傾向です。こうした状況からか、以前は企業向けの不動産活用セミナー(CREセミナー的な内容)で講師として呼ばれる場合、都市部開催のセミナーが多かったわけですが、2019年は地方都市開催のセミナーで呼ばれることも増えました。セミナーに来場される(講演を聞いていただいた)、企業経営者・企業幹部の方とお話していると、「景気のいい今のうちに、賃貸住宅を建てて、もし景気が落ち込んでも、賃料収入での下支えを目論んでいるんですよ」という声を聞きます。

企業が建てる賃貸住宅は、いわゆるアパートタイプもありますが、多くはRC造によるマンションタイプで、1棟当たりの戸数が多いものです。
・既存の自社ビルの建て替えを機に、低層階を自社オフィスとして使い、上層階を賃貸住宅として貸す
・使わなくなった社有車用の駐車場跡地に賃貸住宅を建てる
等はよく見られる事例です。

 「企業業績がある程度維持できているうちに、景気悪化時の下支えとして活用したい」という目論見のようです。

2020年は賃貸住宅市況見通し:全国

 現在の不動産市況から判断すると、地価などの公的な指標は上昇した数字が出る見込みです。しかし、市況感としては、2020年の不動産市況は「横ばい」だと想定されます。こうしたことを鑑みると、2020年の賃貸住宅着工戸数は、概ね2019年の後半並みの数字だと思われます。
 引き続き、あるいは今年以上に、事業会社による賃貸住宅、賃貸住宅を含めた複合型ビルの建築が増えてくるものと思います。この傾向は都市部だけでなく地方都市でも広がると思います。

2020年は賃貸住宅市況見通し:沖縄

沖縄県における不動産市況は、現在極めて好調です。バブル期を超えるような勢いが続いています。2020年も好調は続くと思います。データ上ではかなりいい数字が2020年もでると思いますが、しかし、2020年後半にはそろそろ価格上昇の天井感を実感し始めることと思います。