沖縄県の物価は近年また上昇しているイメージがあります。
市内中心部や新開発・再開発エリアにおいては、ずいぶん高級なお店も増えています。
言うまでもなく物価は国民の生活に大きな影響を与えます。
おにぎり1つが800円になったとして、収入(賃金)が増えていないと、おにぎりはそう簡単に購入できないものになります。かつて第一次世界大戦に負けたドイツでは、パン1つが天文学的な金額になり、マルク紙幣をリアカーに積んでパン屋さんにパンを買いに行ったそうです。
こうした状況把握を行うため、政府・総務省は定点観測を行っています。
その1つが「消費者物価指数」です。いろんなものの価格を観測しています。もちろん家賃(民間家賃)もその項目の1つです。
その指数の中に「コアCPI 」というものがあります。
コアCPIとは、消費者物価指数(CPI)のうち、すべての対象商品によって算出される「総合指数」から生鮮食品を除いて計算された指数のことを示す通称のことです。正式名称は生鮮食品除く総合指数。
生鮮食品とは、生鮮魚介、生鮮野菜、生鮮果物のことを指します。「総合指数」から天候に左右されて振れの大きい「生鮮食品」を除くことで、物価変動の基調をみるための指標として使われています。
図2
図2は那覇市におけるコアCPIとCPIの家賃の項目をグラフ化したものです。
沖縄県が本土復帰したのが1972年5月、2年後1974年に海洋博があり、経済が活況を帯びてきます。図2はそんな1975年1月からスタートしています。
1975年から2000年くらいまでは伸びは逓減していきますが、基本的には右肩上がりでインフレが進んでいます。物価はどんどん上がっていきました。1990年代初めのタクシーの初乗りも300円台だったと記憶しています。
物価の一つである「家賃」もほぼ同じ線を描いています。いろんなものの物価が上がるとともに、家賃も上がる、という状況でした。
しかし、2000年以降2009年を除いて物価の上昇はあまり見られませんでしたが、近年再び物価上昇が続いています。(赤い線)
一方、家賃はこうした動きに反応せず、2000年以降横ばいかやや減少という状況です。(青い線)
図3
図3は、これら二つの相関を調べたものです。
1975年から2009年までは相関係数が0.53ですので、やや強い相関となっていますが、その後2009年以降の相関はマイナスとなっています。物価は上がっているが家賃は上がっていないという状況です。
家賃には粘着性という性質があります。
インフレなどへの反応が遅いという意味です。
民間住宅の賃貸借契約は概ね2年間ですので、2年ごとに賃料の見直しの可能性があるのですが、物価上昇=インフレ状況が2年続いた程度で、家主も賃料を上げるとは言いにくく、少なくとも3~4年くらい続いた際に家賃上昇可能性が出ると思われます。
こうしたことを考えると、那覇においては約3年程度インフレ状況がつづいていますので、そろそろ家賃上昇の兆しが見え始めてくるのではないかと思います。