全国と沖縄県の人口動向から住宅需要を読み解く

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 総務省から2023年10月1日現在の日本の人口が発表されました(発表日:24年4月12日)。これによれば、日本の総人口は1億2435万2千人で、前年から59.5万人の減少、これを日本人だけでみれば1億2119万3千人で、83.7万人の減少となり、減少幅は12年連続して拡大し続けています。日本人の人口減少を外国人の人口流入で留めている状況となっています。

 人口減少は13年連続であり、もはや留めることが難しい状況となってきました。都道府県別に見れば、人口増加したのは東京都のみで、沖縄県は昨年から減少に転じ、2年連続の減少となりました。ここでは、最新の人口動向から賃貸住宅需要について検討してみましょう。

人口減少の背景

 人口の増減は、自然増減と社会増減の2つの要因で起こります。

 自然増減は出生数と死亡者数の差のことを言います。このうち出生数は、減少が続いており23年は75万8千人で前年よりも4万2千人の減少、一方で死亡者数は159万6千人で過去最多となりました。そのため、自然増減はマイナス83.7万人と過去最大(前年より12万6千人増)となりました。自然減少分だけで、堺市(83万人)、新潟市(81万人)、佐賀県(81万人)に相当する人口が減ったということになります。都道府県別にみれば、全て自然増減はマイナスとなっていますが、沖縄県はマイナスが最も少ない県ですが、出生数は、沖縄県でも減少が続いており、高齢化が急速に進んでいる(つまり死亡者数が増える)沖縄県では、この先も自然増減は減少が続くものと思われます。

 政府は少子化対策を行っていますが、出生率の低下は世界的に進んでおり、政府による子育てのための資金援助だけで出生率が増加に転じることは難しいとされ、かつ仮に多少回復しても10年以上の期間がかかると思われます。

 その一方で、全国的に最大の人口ボリュームゾーンである団塊の世代が後期高齢者となるため、死亡者数はこの先増える(あるいは今年程度の高い数字が続く)と見込まれており、そのため毎年80万人以上の自然減少が起こり得ると思われます。いまの日本は、沖縄県も含めて全国的に、「少子化」に加えて「多死化」が進行しており、そのため人口減少が起こっているわけです。

外国人の流入は増えるのか

 社会増減は、入国者と出国者の差で、日本人の出入りと、外国人の出入りの合計です。23年は入国者325万人(前年比+165万4千人)、出国者300万8千人(前年比+158万7千人)となり、社会増は24万2千人と2年連続の増加となりました。国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計によれば、今後も外国人の流入は増えると見込まれています。さらに近年円安が進んでおり訪日外国人が増えていますが、外国人観光客の増は外国人定住者増につながる可能性があります。

 その一方で、円安が恒常的に続くのであれば(つまり日本経済の世界における優位性の低さが続くのであれば)、外国に出国する日本人は増えないものと思われます。

年齢区分別人口

 15歳未満の人口は前年に比べて32万9千人の減少、15~64歳の生産者人口は25万6千人の減少と、近年と同じ状況が続いています。しかし、これまで増え続けていた65歳以上人口は、9千人減少し、これは1950年以降初めてとなります。その一方で、75歳以上の後期高齢者は71万3千人増えて、初めて2000万人を突破、人口割合では16.1%となり、超高齢化社会となっている状況が分かります。ちなみに、24年3月31日に最後の明治生まれの方がお亡くなりになったそうで、これで明治生まれの方はいなくなりました。

 その一方で、15歳未満人口の割合は1950年以降毎年減少し11.4%となりました。1985年には21.5%でしたので、約40年で10ポイント以上の減少となっています。生産者人口は59.5%で前年比0.1ポイント上昇しましたが、ピークだった1992年は69.8%でしたので、10ポイント以上減少となっています。

 現在の人口割合をざっくり言えば、15歳未満11%、生産者人口60%、65歳以上30%(うち75歳以上16%)という感じで、日本は世界でダントツの高齢化社会国ということのようです(日本の老齢化指数255.6、2位はイタリアで200.5)。

 沖縄県では、15歳未満の割合は16.1%となっており、割合で見れば最も高くなっています。また、今後は増えますが現時点での65歳以上人口割合は23.8%と全国で最も低くなっています。ちなみに、15歳未満人口の割合が75歳人口割合を上回るのは沖縄県のみです。

都道府県別の人口

 都道府県別にみれば、東京都は1408万6千人で前年比4.8万人増、全国総人口の11.3%となっています。東京都は47都道府県で唯一の人口増で、46道府県の人口はマイナスとなりました。東京の人口増加率は0.34%で前年は0.20%でしたので、増加率も拡大しています。人口上位は、2位神奈川県922万9千人、3位大阪府876万3千人、4位愛知県747万7千人、5位埼玉県733万1千人、6位千葉県625万7千人(ここまで全国に占める割合が5%超)となっており、この6都府県で全人口の42.7%、首都圏(1都3県)の人口は29.6%と約3割を占めています。

都道府県人口変動の要因と生産者人口の割合

 先に述べた人口増減要因の自然増減・社会増減について都道府県別に見れば、自然増の都道府県はゼロとなっています。沖縄県は21年まで自然増でしたが、22・23年は自然減となっています。

 都道府県を跨ぐ移動が要因となる社会増減をみれば、21都道府県が社会増となっています。このうち、社会増減率が多い上位(1~4位)は東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県で首都圏(1都3県)に人口流入が続いている状況が続いています。

 また、15~64歳の生産者人口の割合は全国平均で59.5%ですが、6割を超えるのは6つしかなく、首都圏(1都3県)と滋賀県、沖縄県のみとなっています。

人口動向でみる沖縄県の今後の住宅需要

 これからの沖縄県は、人口増は見込めないものの、生産者人口割合が6割を超える水準が続き、住宅需要・賃貸住宅需要は引き続き安定すると思われます。一方で、65歳以上の増減率をみれば、最も高くなっているのが沖縄県で、今後高齢者向けの住宅やヘルスケア施設の需要が高まるものと思われます。