土地の測量の現場において,最近ではGPSを利用したかなり正確な位置情報の取得が可能ですが,沖縄県では戦後の混乱時に登記簿の測量を急いだ経緯もあり,実際の土地の面積と登記上の面積が異なるケースが散見されます。
その結果,建物を建築にあたって,実際に土地を測ったところ,境界について隣地所有者と意見が異なる場合があります。境界について争いがある場合の解決方法を説明します。
1 土地の面積
土地の所在や権利関係については法務局で登記されており,土地の面積も登記されています。一般に,登記された面積と実際の面積は一致しているものと思われがちですが,先に述べたとおり,区画整理や農地改良されたところを除き,実際に測量してみると一致しないことはよくあります。原因は様々ですが,測量当時の測量技術が現在よりも発達していなかったことなどが挙げられます。さらに,法務局には,公図とよばれる地図が備えられていますが,これも実際の土地の形状に合わないことがよくあります。
このような現状を鑑みると,境界の紛争は土地の所有者誰にでも起こり得ることといえるでしょう。
2 筆界特定制度
境界紛争の解決手段として,まず,裁判による解決が思い浮かぶようですが, 裁判は,裁判官が厳格なルールに則って行う反面,解決に時間がかかりまた弁護士の費用がかかるなどの問題があります。 そこで,平成17年4月の不動産登記法改正により,「筆界(ひつかい)特定制度」が導入されました。
この制度は,土地の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の“筆界特定登記官”に対して申請することにより,筆界特定登記官が,土地の所有権の登記名義人等の申請により申請人等に意見及び資料を提出する機会を与えた上,外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて,筆界の現地における位置を特定するものです。
申請手数料は,対象土地の価額によって決まります。申請手数料以外には,手続の中で測量が必要となった場合の測量費用など別途の負担が必要となります。
3 境界問題相談センター
裁判によらない民間型境界紛争処理機関としては,土地家屋調査士会が運営する「境界問題相談センター」があり,県内では,平成19年4月,沖縄県土地家屋調査士会内におきなわ境界問題相談センターが開設しました。境界問題相談センターでは,土地家屋調査士と弁護士が一緒になって,境界紛争の相談・調停を行っています。
紛争当事者は専門家立会いのもと,互いに納得ができる話し合いの行うことができます。あくまで当事者間の話し合いではありますが,専門家の意見を元に現地調査や測量・鑑定を行い,これらを話し合いの参考資料にしながら当事者の合意を目指します。手数料は,筆界特定制度と同様に,調査の必要性によって異なります。
4 まとめ
冒頭にも述べましたが、沖縄県だけでなく境界問題は、日本各地で起こっている問題です。「自分の所有土地をいざ売却しようと思って調べてみたら、発覚した。」などがないと、気にも留めないことかもしれません。しかし、その時には結構ややこしい問題となります。
ここまで述べてきたように,近年,境界紛争の解決方法として裁判以外の方法が整ってきています。まずは,各制度について法務局または土地家屋調査士にご相談のうえ,ご自分に適した制度をご利用ください。