所有者不明土地の法整備はどうなる?

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 所有者不明土地とは、「不動産登記簿により所有者が直ちに判明せず又は判明しても連絡がつかない土地」のことを指し、これが近年大きな問題となっています。今回は、「所有者不明土地の問題」について解説します。

22%以上の土地が所有者不明

 国土交通省が平成29年に公表した「地籍調査における土地所有者等に関する調査」によると、所有者不明土地の割合は約22.2%ということですから、その多さがうかがえます。
 所有者不明土地は、管理の放置による環境悪化を招くだけでなく、公共事業の用地買収、災害の復旧・復興事業の実施、民間の土地取引の際に、所有者の探索に多大な時間と費用、労力を要するなど、経済観点から著しい損失を生じさせています。

 所有者不明土地の多くは、「相続が生じても登記がされないことなどを原因」として発生します。これからさらに高齢化が進むことは確実ですから、つまり相続多発時代になるということで、そうすると所有者不明土地が増える可能性が、これまで以上に高まります。
 そのため、所有者不明土地が発生しないようにするための施策、すでに所有者不明となってしまっている土地の円滑に有効活用できるようにする施策が求められます。

 その他、所有者不明土地が発生するパターンとして代表的なものは、法人や個人が所有する土地があり、その所有者が住所を移転した際に、都度都度登記を変更する手間がかかり、それを怠る法人・個人がいるようで、これも所有者不明土地となります。

特措法スタートから、もうすぐ3年

 こうしたことから、早急な法整備が必要とされ、2018年11月から法務省及び国土交通省が所管する「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」の一部が施行され,法務省関連の制度の運用が開始されました。この特別措置法では,法務省関連の制度として,登記官が,所有権の登記名義人の死亡後長期間にわたり相続登記がされていない土地について,亡くなった方の法定相続人等を探索した上で,職権で,長期間相続登記未了である旨等を登記に付記し,法定相続人等に登記手続を直接促すなどの不動産登記法の特例が設けられました。

 この特措法が施行されて今年の秋に3年を迎えます。そこで2021年4月下旬に成立・公布された法律により、下記のように、さらに一歩進んだ法律となる見込みです。

所有者不明土地の特措法は、こう変わる

 こうした流れの中で、さらに所有者不明土地を抑えられるよう、一歩進んだ法律の施行をめざします。
 まず、発生予防策として法律化するのは以下の2つです。

 不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることを義務付けられます。併せて、相続人申告登記の創設などの負担軽減策・環境整備策がパッケージで導入されます。これは、本令公布日(2021年4月28日、以下同)から3年以内(つまり、最も遅くとも、2024年4月27日までに)に施行されます。

 また、住所等の変更登記の申請義務化となります。これは、5年以内(同)に施行されます。
他の公的機関(住基ネット等)から取得した情報に基づき、登記官が職権的に変更登記をする方策が併せて導入されます。

 また、これは、活気的なことだと思いますが、「土地を手放すことができる制度」が導入されます。土地を国に渡す制度です。
 この制度は、「相続土地国庫帰属制度」という名前で創設され、「相続等により土地の所有権を取得した者が、法務大臣の承認を受けて、その土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度」です。

 こうしたことが今度の法律の進展の柱ですが、これ以外にも、細かい制度を盛り込み、所有者不明土地の発生を抑える施策が取られるようです。

 スムーズな施行を期待したいと思います。